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「いいところに住んでいるのね」と言われることがエンターテインメントの


「ヴィクトリア・ガーデンズ」



 

 

1.ヴィクトリア・ガーデンズの概要と特徴

 
ロサンゼルス郊外の新興住宅(ニュータウン)であるランチョ・クカモンガ市に大型ライフスタイルセンターである「ヴィクトリア・ガーデンズ」が2004年10月にオープンした。ランチョ・クカモンガ市はロサンゼルスの東96qに位置する新興住宅地であり、商圏となるインランド・エンパイア地域の人口は80万人の、新たに住宅が続々と開発されている急成長都市である。ランチョ・クカモンガ市が市に昇格したのは1977年であり、その時以来、市の中心街地をつくることが同市の念願であった。ヴィクトリア・ガーデンズは、同市の意向を十分汲み取った、市の顔づくり・街づくり・住民の交流の場づくりの、正に大型ライフスタイルセンターのSC開発であり、住民が「いいところに住んでいるのね」と言われる街づくりが、住民のよろこびであり、今回事例として取り上げた理由である。

 ヴィクトリア・ガーデンズの施設概要と特徴は次の通りである。
(1)中心市街地となるSC

 ランチョ・クカモンガ市は人口急増の新興住宅地であり、人口増加を見込んだ各種商業施設が無秩序に開発され、市の中心となる商業の場が形成される見込みがなかった。そこで市は中心市街地となるSCの開発に着手した。最初はトライゼック・ハン社が1983年にエンクローズド型のRSCを計画したが、核となる百貨店が出そろわず計画は凍結されてしまった。再度、市は新たにエンクローズド型のRSCの開発を募ったが、SC開発の大手であるフォーレスト・シティ社が閉鎖型ではなく市の中心市街地となるようなオープンエアモールのタウンスクエア型のSC開発を提案し、それが採用されて現在の姿となった。日本でもアメリカでも昔は「だれもが認める市の顔となる中心市街地」があった。そこには商店街や公共施設やサービス施設があり、日常生活にとっての必然性のあるコミュニティの場であった。ところが、車社会になるとこれらのコミュニティ施設が分散化し、商店街も衰退化し、市の中心となる中心市街地がなくなってしまった。ここが市の中心であり、ここが地域の交流の場である中心市街地の存在は、地域の絆づくり・故郷づくりにとって必要である。アメリカでは商店街がほぼ消滅してしまい、市のみならず地域の中心としてのコミュニティ・オアシス機能(地域の住民の井戸端会議となるオアシスのような場)がなくなった。最近、ライフスタイルセンターが地域の交流の場としてのSCの位置づけを確立し、商店街の良さを取り入れたSCとして発展している。ヴィクトリア・ガーデンズは、今後も人口増加によって大発展することが予定されるランチョ・クカモンガ市の中心市街地となる地域の交流の場となり、だれもが認める地域の顔となるSCを目指している。

(2)商業施設と住宅が一体となった街づくり型SC

 基本的には住宅と商業は相反する位置づけにある。住宅は閑静な居住空間を要求するし、商業は動的なにぎわい空間を追求する。しかし本来の街とは住宅と商業が一体化、住宅の中に街があり、街の外に住宅があるのが理想的である。日本の多くのニュータウン開発においては住宅が先行され、街の中心的役割を果たす商業が全くの魅力のない場合が多く、ニュータウンの居住者は訪ねてきた友達から、都心から遠くて不便な場所に住んでいる感を持たれ恥ずかしい思いをしていることがよくある。そのニュータウンの中心となる場所に、すばらしい商業施設を先行開発されていると、訪ねてきた友達から「いいところに住んでいるわね!」、住環境もいいけれど商業施設が充実し、住めば都を感じ、地域の交流の場としての中心市街地が確立されていることになる。これなら都心へ来る必要性はないとの評価をされると、住民として満足度が高くなり、郷土愛やふる里を想う気持ちが高くなる。正に、ヴィクトリア・ガーデンズが、その位置づけにある。ランチョ・クカモンガ市はロサンゼルスの東96qのインランド・エンパイア地域にあり、この30年間に急速に人口が増加した急成長住宅都市である。従来型のエンクローズドモールは内向き型SCであり、建物と駐車場の海となり、住宅地の中のSCとしての街に溶け込んだ形態にはなっていない。そこで、自然とデザインを融合させ、外向きのオープンモールの街づくりであるライフスタイルセンターとしてのSC開発を行った。SCは20世紀の最強の業態であり、ライフスタイルセンターは21世紀の最適の業態である。20世紀の経済発展によって起こった多くの課題を地球的視点と人間的視点から「環境づくり・場づくり・絆づくり」により解決して行うとしたSCがライフスタイルセンターである。ランチョ・クカモンガ市にとってだれもが認める市の顔であるヴィクトリア・ガーデンズは正に住宅と商業が融合し将来的にはオフィスも導入される街づくりである。

(3)自然発生的に成長した街を演出したSC

 ランチョ・クカモンガ市は1977年に市に昇格し、それまではさびれた町であった。人口が急増して都市となったが、歴史は浅く、市全体的に現代的建物のみである。ヴィクトリア・ガーデンズは、3,000本の木が植えられ緑や水を豊富に活用した非人工的施設であるだけでなく、ヴィクトリア・ガーデンズが自然発生的に成長してきた街のように時代性を考慮しながら計画されている。

 ヴィクトリア・ガーデンズのデザインチームは、ランチョ・クカモンガ市が、すでに何十年にもわたってダウンタウンを持っていたかのようなコンセプトを組み立てている。つまり、何年もかかってダウンタウンを作り上げられてきたようにプランされ、そのために時代ごとに異なる建築様式を取り込んだ。中心となるタウンスクエアは1920年代風に、そして周辺に行くにしたがって次第に新しい建築様式が適用され、自然と時代を感じるように工夫されている。

 ヴィクトリア・ガーデンズは3つのエリアから構成されている。

 1つは「ノース・メインストリート」でヤング世代を対象にした専門店が導入され、2つ目は「サウス・メインストリート」で、アップスケール・ファッション専門店が導入され、3つ目は「タウン・スクエア」は子供とファミリー向けの専門店が集められ、公園や遊び場が配置されている。

 ノース・メインストリートは、伝統的なダウンタウンのデザインを持っており、様々な様式の建物から構成され、カルチャーセンター、16スクリーンのAMCシネコン、そしてフードホールと名付けられたフーズコートがある。

(4)ミドルグレード志向のRSC

 ヴィクトリア・ガーデンズは百貨店3店とテナント数160店で形成されるRSCである。リース面積は第1期が8万3,700u、第2期が完成すると12万uとなる。核店舗はミドルグレードの百貨店であるメーシーズとロビンソンメイの2店とベイシックグレードのJCペニーの3店で形成されている。アメリカでアッパーグレードに位置づけられているニューマンマーカス・サックスフィクスアベニュー・ノードストローム・ブルーミングデールスは核店舗として導入していないため、SCの全体のグレードはポピュラー志向のRSCと呼ぶことができる。アメリカではアッパー志向のRSC、ミドル志向のRSC、ロー志向RSCフルグレードのRSCとグレード的に多様である。アメリカでは核店揃えの違いによって多様化を実現させている。ヴィクトリア・ガーデンズは、その意味から見て、ミドルグレード志向のRSCと言うことができる。ランチョ・クカモンガ市の位置するインランド・エンパイア地域は新興住宅エリアであり、住宅ローンによる可処分所得の低さや若いファミリーの多いマーケットであるため、マーケットの成熟度が低いことが、ハイグレードの核店舗が出店していない原因と思われる。

(5)ライフスタイルRSC

 ライフスタイルセンターは本来ならば地域密着の中商圏型SCである。しかし、ライフスタイルセンターが持つ自然環境・建築デザイン環境・体験環境と融合したSC、人的ふれあいのある地域密着性と融合したSC、生活提案性と融合したSC、街づくりと融合したSCの特性は強力であり、従来型のSCも、このライフスタイルセンターが持つ性格をSCに導入しようとしている。NSCにライフスタイルセンターの良さを導入したライフスタイルNSC、CSCにライフスタイルセンターの良さを導入したライフスタイルCSC、RSCにライフスタイルセンターの良さを導入したライフスタイルRSC、パワーセンターにライフスタイルセンターの良さを取り入れたパワータウン…等のライフスタイルセンター志向のSCが続々と出現している。21世紀の最適SC業態としてのライフスタイルセンターが持つ固有の特性は、住民を対象とするライフスタイルセンターにとって必要不可欠な条件になりつつある。

 ヴィクトリア・ガーデンズも営業面積8万3,700u(第一期のみ)であり、核店を3店有するRSCである。地域の住民のだれもが認めるコミュニティ&コミュニケーションの場としてのヴィクトリア・ガーデンズは、正にライフスタイルセンターの持つ固有の特性を付加したライフスタイルRSCと呼ぶことができる。ただ、多くのライフスタイルセンターは、エンクローズドモール70%、オープンエアモール30%のハイブリッドモールであるに対し、ヴィクトリア・ガーデンズは、基本的にすべてオープンモールのライフスタイルセンターである。

2.ヴィクトリア・ガーデンズのエンターテインメント性の要素

 ヴィクトリア・ガーデンズは、住民が「いいところに住んでいるわね!」と言われることがエンターテインメントである。

(1)住民が自慢する街づくりがエンターテインメント

 一般のSCは消費者(利便性と廉価性目的で来店する客)や生活者(新しい生活や現状より向上した生活を目的で来店する客)を対象としている。ヴィクトリア・ガーデンズは市の顔として、だれもが認める中心街区としてのSCである。それゆえに、住民(コミュニティの一員であり、住めば都を感じる住環境を求めて来店する客)が自慢し誇りに想う街づくりである。ランチョ・クカモンガ市へ転居した家族の友達が、ロサンゼルスから96qに位置する当市に来た時に、ヴィクトリア・ガーデンズを中心としたニュータウンを見て遠いけれど、いいところに住んでいるのね!と言われる街づくりである。正に、住民にとって、住めば都の感覚を他人から評価してもらうことがエンターテインメントである。

 住民から地域の顔として、コミュニティの交流の場として、だれもが認める中心市街地としての評価が高まるとSCの集客力が著しく高まることは多くの事例から立証されている。ヴィクトリア・ガーデンズは、正に、その目的のために開発された行政指導型の民間資本による住民のためのSC開発である。

(2)商店街の良さを取り入れた街づくりがエンターテインメント

 今、アメリカでは1960年代から急激に崩壊が始まり1990年代には淘汰されてしまった商店街へのノスタルジア(郷愁)が起こっている。商店街は都市の中心のダウンタウンに位置していたため、商店街へのノスタルジアはダウンタウンへのノスタルジアでもある。商店街は20世紀の最強のSCという新業態に負けて淘汰されつつあるが、商店街にも良さがあった。しかし、良さは長所であるが、良さを勝ちパターン化しないと商店街の良さは活かされず自然消滅してしまう。この商店街良さをSCという勝ちパターンに導入した新業態が21世紀の最適業態といわれているライフスタイルセンターである。ヴィクトリア・ガーデンズは、市の中心市街地・地域の交流の場・家族の絆づくり等において住民と商業が融合され、建物的にも歴史・時代感覚を取り入れ、昔の商店街が持っていた良さをSCとして再現している。正に、住民にとってのエンターテインメントである。

 ヴィクトリア・ガーデンズは将来的には周辺で3つのオフィスタワーが建設される予定である。ヴィクトリア・ガーデンズの名称は1800年代に広範にオーストラリアで開発されたモデルコミュニティのヴィクトリアから取っている。わが国のニュータウンづくりや平成の市町村合併の中心市街地づくり・新都市の顔づくりに非常に参考になるSCである。
 
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