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自然と調和した街並みがエンターテインメントの


「ユニバーシティ・ビレッジ」


 

 

1.ユニバーシティ・ビレッジの概要と特徴

 
今から8年前の1998 年にシアトルで「ユニバーシティ・ビレッジ」を見て目から鱗が落ちた。核店がSM であるにもかかわらずテナントミックスはRSC並であり、しかも集客力と売上高は抜群であることに注目 した。自然環境と調和し、住民の出会いの場を演出し、その中に有力テナントが街並み型に配置され、今ま でのSCの王道であった多核・モール型SCのSC理論とは全く異なるSCのメカニズムで成り立っている と感じた。そして、このユニバーシティ・ビレッジの業態をライフスタイルセンターと呼んでいることを知 った。ユニバーシティ・ビレッジは1957 年にコミュニティ型SCとして開発された。コミュニティ型SCは アメリカでは1970 年代から勝ちパターンではなくなり、そこで、ユニバーシティ・ビレッジでは1995 年に 核店であった百貨店やハードウエアストアやスーパーマーケットなどの大型店を細分化し、現在のユニバー シティ・ビレッジの原型のSCにリニューアルした。2004 年に6期計画が完成し、環境演出や、MDing がパワーアップし、一段と集客力が高まっている。今回のリニューアルによってライフスタイルセンターと しての磨きが益々掛かったため、今回事例として取り上げた理由である。

 ユニバーシティ・ビレッジの施設概要と特徴は次の通りである。
(1)真正ライフスタイルセンター

 SCは20 世紀の最強の流通業態であるが、ライフスタイルセンターは21 世紀の最適な流通業態である。 ライフスタイルセンターを意味訳すると「商店街の良さを取り入れたSC」ということができる。すなわち、 まだSCが発達していなかった時代に、地域の交流の場として、また、地域の井戸端会議の場となり地域の 顔となり、買物と生活が一体化した機能を持っていた“場”が商店街であった。今、アメリカの流通業の中 で多核・モール型RSCに対するアンチテーゼ(反発・ただし、RSCは必要ないというのではなく、これ 以上、いらないという意味)が起こり、逆に人的ふれあいがあった商店街へのノスタルジー(郷愁)が起こ り、その受け皿がライフスタイルセンターである。

このライフスタイルセンターは本来、小商圏〜中商圏の比較的コンパクトな規模で、ライフスタイルセン ターの意味訳通り商店街の良さをSC化したレベルであった。それゆえに、ライフスタイルセンターをコミ ュニティ型SCや商店街を勝ちパターン化した業態として位置づけられてきた。このようなライフスタイル センターを「真正ライフスタイルセンター」という。ところが、ライフスタイルセンターが持つ要因である 「自然環境・建築デザイン環境・体験環境と融合したSC」「人的ふれあいのある地域密着性と融合したSC」 「生活の提案性と融合したSC」「街づくり・街並みセッティングの第3の空間と融合したSC」が強力な武 器となりつつあることをSCデベロッパーが認識したため、あらゆるSCにライフスタイルセンターの要因 を付加し始め、ライフスタイルセンターの定義が多様化してきた。すなわち、ライフスタイル志向のRSC、 ライフスタイル志向のNSC、ライフスタイル志向のパワーセンター等のSCの出現である。一方、真正ラ イフスタイルセンターが対象とする地域のコミュニティの中心という概念をより広域化し、より多目的化し、 行政単位あるいは地域エリア内の顔となる場づくりとして「タウンセンター」が出現してきた。商業機能以 外にコミュニティ施設(公共施設+文化施設+エンターテインメント施設+オフィス施設+住宅施設+生活 サービス施設…等)を数多く導入し、多目的かつ広域圏の顔となるセンターづくりである。

 広義のライフスタイルセンターを分類すると次のようになる。
 ユニバーシティ・ビレッジは正に真正ライフスタイルセンターであり、CSCをライフスタイルセンター の要因を付加し勝ちパターン化したSCである。また、ライフスタイルセンターの中のライフスタイルセン ターとして位置づけられる。1995 年に脱CSCを始めてから5回のリニューアルにより、ライフスタイルセ ンターの原型基本要因に磨きをかけ続け、ライフスタイルセンターの本家と呼ぶにふさわしくなった。

(2)負けパターンのCSCを勝ちパターン化したSC

 ユニバーシティ・ビレッジは1957 年にCSCとして開発された。現在、わが国では1991 年の旧大店法 の緩和による自由競争社会の中で過渡期業態であるCSCは長期低落下の道を歩んでいる。アメリカにお いては1970 年代からCSCは長期低落下の道を歩み始め、現在では淘汰されて、ほとんど存在していない。 1995 年のライフスタイルセンター化前のユニバーシティ・ビレッジはSCとしてのパワーは発揮できず、 散々な状態であった。

 そこで、新しいオーナーはオープンエアのCSCの核店であった百貨店とハードウエアストアやスー パーマーケットを細分化し、専門店としてのテナントを導入し、核店舗依存型のSCではなく、専門店の 集合体の強みを活かすSCに脱皮した。周辺のRSCとの異質化及び近くにある高級住宅地や大学まちの マーケットに支えられ次第に人気のあるSCへと進化した。ユニバーシティ・ビレッジはリニューアルを くり返し、5回目のリニューアルが2004 年にクレート&バレルの導入と立体駐車場を増設し完成した。常 に進化の連続であり、リース面積3万u、200 億円の売上高を達成するまでになった。今回、第5回のリ ニューアルにおいての増床計画を行ったが、第1回〜第4回のリニューアルは、現状の建築の面積内で核 店舗の再配置及び売場の圧縮付加によるテナントの見直し・強化で業績を高めてきた。SCは生ものであ り鮮度が大切である。大規模なリニューアルも大切であるが、小〜中規模のリニューアルの継続的な実施 も必要である。ユニバーシティ・ビレッジはテナントのリース切れを狙って、継続的なリニューアルを行 っている。今回のリニューアルにより、ライフスタイル化に磨きが掛かり、より多目的化した「スモール タウン」の雰囲気を導入している。

(3)核店がないにもかかわらずRSCレベルのテナント構成のSC

 SC理論によるとNSCはSM及びSMと相乗効果を発揮するテナントミックス、CSCはGMS及び GMSと相乗効果を発揮するテナントミックス、RSCは百貨店等の多核店及び百貨店と相乗効果を発揮 するテナントミックスが原理原則である。ところが、ユニバーシティ・ビレッジは核店がQFC(グルメ SM)のみであるにもかかわらず、RSCに出店しているテナントが総揃えしている。例えば、クレート &バレル、バーンズ&ノーブル、エディバウア、ギャップ、バナナリパブリック、レストレーションハー ドウエア、アンソロポロジィ、アバンクロンビ&フィッチ、ポタリーバーン、トミーバハマ、チコーズ、 アンテーラー、Jクルー、タルボッツ、ビクトリアシークレット、ソニースタイル…等であり、ナショナ ルチェーンも多いが、同時に地元で強いテナントも導入しており、競争するRSCとのテナントミックス 上の異質化も行っている。地元テナントとナショナルテナントの割合は半々としており、地域固有の特性 をMDingにおいて発揮している。

 従来型のSCは核店の集客と商圏形成力によって専門店の成立を高めてきた。SCは核要素(集客力と 商圏形成力による専門店を成立させる力)は、従来はワンストップショッピング&コンパリゾンショッピ ング(一括買いできる魅力と業態間の比較購買の魅力)であった。それゆえに、多核型とその核店と相乗 効果を発揮するためのモール型SCが基軸となる。それゆえに、多核・モール型SCが王道である。し かしながら、現在は、核要素は必ずしも核店舗のみではなく、「バリュー性」(安さや価値が集客の要素) や「エンターテインメント性」(楽しさやよろこびが集客の要素)、さらにはコミュニティ&コミュニケー ション性(地域の交流の場が集客の要素)にもSCの集客力と商圏形成力による専門店を成立させる力に なっている。すなわち、バリュー性を核要素とするアウトレットセンターやパワーセンター、エンターテ インメント性を核要素とするエンターテインメントセンター、そして、コミュニティ&コミュニケーシ ョンを核要素とするライフスタイルセンターである。ユニバーシティ・ビレッジは核要素を核店舗に依存 するのではなく、地域との絆、核族との絆、友達との絆を見えない糸でつなぐ地域の交流の“場づくり” により集客力と商圏形成力による専門店を成立させている。それゆえに、ユニバーシティ・ビレッジは核 店舗がないにもかかわらずRSC並のテナントミックスが可能となっているのである。

(4)地域に溶け込む建築デザインや商環境演出のSC

 ユニバーシティ・ビレッジを取り巻く立地は高級住宅地であり大学まちでもある。ミドリの多い自然と 一体化したエリアであり、ユニバーシティ・ビレッジは見事に地域にしつらえ感のある溶け込みがなされ ている。SCが地域に溶け込む場合、ユニバーシティ・ビレッジのように地域の環境に自然に調和した形 で溶け込む「静の地域への溶け込みタイプ」(ユニバーシティ・ビレッジ型)と、地域の環境の中で目立つ が違和感のない、溶け込む「動の地域への溶け込みタイプ」(カラバサス・パーク型)がある。ユニバーシ ティ・ビレッジは周辺の緑の多い自然と閑静な住宅の延長線上で施設内は緑(樹木や植栽)・広場・アベ ニュー(小径)と建築デザインや店舗ファサードが見事に調和し、エンクローズドモール型SCのような、 ゴミゴミ感やザワザワ感やワイワイ感のない自然と一体感や静寂感のあるSCである。ただ、各店舗には 統一したデザインを求めず独自のファザード・デザインを導入させ個性のある店舗デザインを演出してい る。

(5)人と自然にやさしいSC

 オープンエアモールが地域環境にやさしいことは大切なエネルギー資源の節約や自然にふれることによ る肉体的精神的好影響があげられる。それ以上に、ユニバーシティ・ビレッジは小さなことではあるが、 人にやさしいことを2つ事例で示す。1つは、当然ながら歩車分離はされているが、ユニバーシティ・ビ レッジでは歩道が車道より一段高くなっており、歩道は一定、車道に段差をつけている。これは、歩行者 の安全・安心と歩行者が無段差歩行ができ、かつ、雨の日に歩行者が足元の水たまり場を気にせずに歩け る環境を確保している。もう1つは、各店舗にガラス屋根のひさしをつけて雨の日に対応している。ガラ ス屋根のひさしをつける意味は晴れた日に日光を通すためである。このように、ハートビル法の認定シー ルをもらうために色々な設備を備えることも大切ではあるが、ユニバーシティ・ビレッジではユニバーサ ルデザインを身近な所で設計思想として導入している。

2.アメリカでのオープンエアモールの考え方

 ユニバーシティ・ビレッジが立地するシアトルは、寒い・暑い・雨・風・雪の自然条件にあり、わが国と 変わらない四季のあるエリアである。昔はアメリカでもオープンエアモールのSCはロサンゼルスやサンフ ランシスコのような年中気候温暖なエリアが中心であった。わが国でアメリカのオープンエアモールを真似 て失敗したのはそのためであった。ユニバーシティ・ビレッジは四季のあるシアトルでオープンエアモール のSCとして人気を博しているSCである。今、全米でオープンエアモールのSCが広がっており、気候に 関係なく開発されている。また、エンクローズドな多核・モール型SCにおいてもリニューアルでパワー アップする時は、オープンエアモールゾーンを付加して、ハイブリッド型SCを構築している。例えば、ワ シントン州レニーウッド市のアルダーウッドモールは、リニューアルにおいてオープンエアゾーンを増床し、 「ザ・ビレッジ」(新たに35 店舗のライフスタイルセンターゾーン)と「テラス」(シネコンとレストラン ゾーン)を開発しハイブリッド型SCとしてパワーアップしている。

 このように、気候に関係なくオープンエアモールのSCが開発されている理由は次の5つである。 それは、第1にエンクローズドの多核・モール型に対するアンチテーゼ(反発・必要ないというのではな く、もうこれ以上いらない)が起こり、エンクローズドな多核・モール型SCへの異質化戦略として、第2 に地域環境の悪化に伴うエコロジー(自然志向+健康志向)への配慮と愛着の必然性として、第3に、エン クローズドモールの平均的・無変化の快適性空間以外に、快適な自然条件の時期のオープンエアモールの著 しく高いアメニティ性の魅力を望むようになったこと、第4に、SCのデベロッパーにとってもテナントに とってもイニシアルコスト及びランニングコストが安くなるためのローコストのSC運営が可能となったこ と、第5に、エンクローズドモールに対してオープンエアモールの売場効率や業績が決して低くないことで ある。ユニバーシティ・ビレッジのテナントの売場効率は高く、デベロッパーの収益構造も高い。今、アメ リカではエンクローズドな多核・モール型SCは王道ではあるが、オープンエアモールの成立性の高さに伴 う受け皿としてのライフスタイルセンターが次世代型SCとして注目されている。正に、ユニバーシティ・ ビレッジはその代表的SCである。

 ユニバーシティ・ビレッジでは、真正ライフスタイルセンターであり、ライフスタイルセンターのパイオ ニアであり、かつ、現在においてもライフスタイルセンターの要因を一番持っている王道のSCでもある。 常にリニューアルを行い、常に進化している姿は見事である。是非、参考にすべきライフスタイルセンター である。
 
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