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住民が自慢するSCがエンターテインメントの
グンゼタウンセンター つかしん


 

1. グンゼタウンセンターつかしんの概要と特徴

1985年に旧つかしんは街づくり型SCとして叶シ洋ランドシステムズ (当時は西武百貨店系デベロッパー)により開発され一時は脚光を浴び、売上高もピーク時(1992年)に400億円に達した。ところが、立地と仕組みに課題があったために旧大店法の廃止による競争激化やバブル経済の崩壊後は長期低落が続き、核店であった西武百貨店も2004年に撤退し、売上高も4分の1まで低下していた。

しかし、2006年4月29日に、グンゼグループが直接運営管理に乗り出し、再生つかしんはイメージを一新させ、消費者や生活者という視点だけではなく、住民という視点をプラスして全く新しいコンセプトで「グンゼタウンセンターつかしん」として蘇えさせた。再生つかしんはリニューアルという概念ではなく、正に事業再生という概念で再建されたSCである。グンゼグループが100億円の投資により既存施設の改築及び新規施設の増床を行い、営業面積68,000u(旧つかしんの1.5倍)の阪神間で最大級のSCに生まれ変わった。今アメリカでは、モール型SCに替わりライフスタイルセンターが躍進している。特に注目すべき点はこのライフスタイルセンターの要因である"場"づくりの概念を導入し、尼崎市・伊丹市の「住む人」の立場に立ったSCにしたことである。さらに、日常生活の中の新しさを提案する食を文化まで高めた売場の創立を行い、次世代志向の地域密着型SCの概念を導入している。この「"場"の概念と地域密着の概念」を取り入れたことがエンターテインメントであり、再生つかしんを事例として取り上げた。

グンゼタウンセンターつかしん(以下再生つかしん)の施設概要と特徴は次の通りである。


(1)事業再生としてのSCリニューアル

旧つかしんは梅田中心街の商業上の直下型立地であるのに百貨店を核店とした課題のあるSCであった。それゆえに旧大店法の廃止及びバブル経済崩壊後は長期低落下にあり一時は売上高が最盛期の4分の1まで低下した。旧つかしんのリニューアルのコンセプトづくりには全面建替え案と現状の延長線上の改築案の2つの選択肢があった。選択した施設内容は、既存の施設を残しつつ、新築ゾーンを3分の1加え、全体としては1.5倍の施設規模とした。すなわち、全面建替えすると有効な資源を無駄に廃棄することになるため、もったいないという精神のもとに、現状の資源を新たな視点で再構築し、かつ増床計画をプラスして、全く旧つかしんとは異なるコンセプトで再生させている。ここでの課題は既存の施設の改築と新たな新築によるイメージの一新であった。そのためにデザイン技術による商環境及び空間・場づくりに工夫がされている。ここで事業再生としてのリニューアルという意味は、再生されたつかしんは、旧つかしんとはビジネスモデル(事業としての仕組み)がコンセプト・収益構造・対象とする客・MDing的に全く異なることである。SCのコンセプトの根本的な違いと同時に、100億円の再投資による売上高3倍(100億円から300億円)への挑戦は正にリニューアルというより事業再生ということができる。関西人が好む「もったいない」(既存施設の最大利用)を基軸に新築付加とデザイン技術によるイメージ一新は見事である。

(2)地域密着・ライフスタイルRSC

今、アメリカではモール型RSCにアンチテーゼ(反発・ただしモール型RSCは必要ないと言う意味ではなく、もうこれ以上必要ないという意味)が起こっている。わが国ではこれからモール型RSCが成長する時代となってくるが、モール型SCに対する生活者のもう1つのSCの選択肢がライフスタイルセンターであることは間違いない。ライフスタイルセンターの要因は、第1に自然環境とデザイン環境が融合したSC、第2に人的ふれあいのあるコミュニティ&コミュニケーション(地域の交流の場)と融合したSC、第3に日常生活の中の"新"の生活提案(こんな生活があったのか!こんなことをして欲しかった!)と融合したSC、第4に歩いて楽しい街づくりと融合したSCである。ライフスタイルセンターは、アメリカではポストモール型RSCとして注目を浴び成長しているSC業態である。旧つかしんは元々街づくり型SCであり自然と一体化したSCであった。しかし、旧つかしんはMDing的に立地と仕組みが適合していなかったため街づくりや商環境が勝ちパターン化されていなかった。いわば負けパターンの街づくり及び商環境づくりであった。それゆえに、再生つかしんの既存の街づくりや商環境を勝ちパターン化したMDingと一体化させ、既存施設を本来の持つ良さを勝ちパターンとして再生させている。再生つかしんは、このような21世紀の最適業態であるライフスタイルセンター(SCは20世紀の最強業態)の要因を見事に導入してイメージを一新している。

同時に、地域との密着を目指したSCでもある。再生つかしんはマーケット的に旧つかしんが広域・低シェア型SCであったのに対し、中商圏・中シェア型SCの位置づけを取っている。すなわち、もっと地域との関連性の強い日常生活に役に立つSCに脱皮している。最近の多くのSCがタウン・リゾート型の遊び志向かつニューファミリー特化のSC化しているが、再生つかしんは地域の住民の日常生活に全面支援するSCを目指している。具体的には、わが国でも郊外型SCとしては最大級の食文化売場(営業面積1万u)と特定の年代に片寄らない子供・ファミリー・シニア層のだれにも対応できるテナントミックスとしている。また住民みんなが集まり井戸端会議ができ、待ち合わせの場となる地域の顔づくりを行っている。このように再生つかしんは、ライフスタイルセンターの魅力の要因と地域密着性が融合した地域密着・ライフスタイルRSCという次世代のSCづくりである。また、本来ならば中商圏・中シェア型SCであるCSCのニーズをRSCという規模で展開しているSCでもある。

(3)競争SCとの共存共栄による最高の満足な商圏の中に住んでいると客が感じるSC

1つのマーケット(商圏)に、2つの正規型のSCと複数のゲリラ型SCが成立する考え方を2.5のSC成立理論と言う。すなわち、客は生活に必要なフルライン対応のSCが2つと、特色のあるニッチニーズ対応のSCを複数持つことにより最高の顧客満足度を有することになる。再生つかしんの2q地点にダイヤモンドシティが開発し運営している「伊丹テラス(以下テラス)」(営業面積51,775u・売上高推定360億円)がある。再生つかしんとは商圏が重複しており、かつ、テラスはSC業界の中でも、最強の業績と内容を持つSCである。そのような中で再生つかしんは1つの商圏の中に客は異質性のある2つの選択肢を求めているとの2.5のSC成立理論に基づきコンセプトを策定している。

テラスはタウン・リゾート志向(ファミリーの遊び志向)の「モール型SC」(モールにエンターテインメント機能を持たせ、客がモールを散策しウインドウショッピングするSC)である。一方、再生つかしんはコミュニティ・オアシス志向(地域の人々の日常生活の中で交流の場とオアシス感を感じ、日常の中の新のショッピングをするSC)の「場づくり型SC」(住民の井戸端会議や地域の顔となりショッピングや健康・いやし、さらには地域の絆、家族の絆、友達の絆を高める"場")である。住民への各種マーケティング調査によると、テラスは素晴らしいSCではあるが、戦略的に捨てているニーズがたくさんあることがわかった。テラスが捨てたニーズを新しいコンセプトで再構築したSCが再生つかしんであると言える。

再生つかしんとテラスの共存共栄体制づくりの「棲み分け手法」は下記の表の通りである。

これにより、再生つかしんとテラスの重複商圏の中に住んでいる客のエリア満足度は最高になり、その結果ストップザ大阪が可能となり尼崎市・伊丹市への地元消費滞留率が著しく高まることになる。

(4)食を文化まで高めた圧倒的一番型の食の業態を基軸とするSC

再生つかしんは平和堂のSSM、コープこうべのSMの2核体制に食に関する専門店69店舗で構成するダイニングモールをMDingの基軸としている。ダイニングモール(平和堂のSSMとコープこうべのSM含む)は営業面積1万uで展開する郊外型SCの中では、わが国bP級の規模である。食を文化まで高めるためには、第1に規模及び選択肢(アイテム数)において地域圧勝型であること、第2に内食・中食・外食の"食べる"に関するニーズにフルラインで応えること、第3に性格の異なる食の業態を3業態(フルラインの食をセルフで提供するタイプの平和堂、安心・安全・こだわり志向のコープこうべ、安さと旬鮮・グルメをバザール型販売で提供する新市場としてのマーケットプレイス)の導入、第4に生活提案のある(こんな食生活があったのか!こんなことをして欲しかった!)食の売場形成である。食に関するニーズは、人は1日に3回食事をし、かつ2日に1回は食に関する買物をすることによるSCへの来街の必然性を高めることに意義があり、再生つかしんは食を文化まで高めて集客の基軸にしている。多くのモール型RSCがエンターテインメント性を基軸に集客していることとの根本的違いがある。

(5)4つの異色モールのSC

再生つかしんは多くのRSCがギャレリア型のモールを基軸にテナントミックス及び回遊性・散策性を演出しているに対し、ストリート型モール(店と店との一体及び拡大通路の概念による回遊導線)を導入し、エンターテイメント性はモールではなく、後で述べる4つの"場"の空間をエンターテインメント性として展開している。そのような考え方の中で再生つかしんは、食を中心としたダイニングモール、ファッションや雑貨を中心としてロマンチックモール、メガストアを中心としたパワーモール、そして、オープンモールで飲食やサービスを中心としたがガーデンモールの4つの異色モールで形成されている。ロマンチックモールのテナントミックスは、トレンド性の高いテナントではなく、地域密着性のテナントミックスを導入している。また、6つの核店(平和堂、コープこうべ、ジョーシン、ユアーズ、ザ・ダイソー、アミーゴのメガストアにグンゼスポーツ、湯の華廊やマグネットストアを含めると10つの核施設)と210の専門店で構成される阪神間bP級のSCである。またGMSの平和堂は兵庫県初進出であり、従来のGMSではなく、アップスケールのアルプラザタイプでジュニア百貨店を目指している。競合対応としては、テラスのトレンドや流行志向のテナントミックスに対し、再生つかしんは地域密着・日常生活の中の"新"を目指すテナントミックスとしている。その結果、互いに得意分野が異なる3割差異化・特化、7割総合化のMDingにより共存共栄体制を確立している。

(6)地域の生活文化に対応したSC

再生つかしんは買物や飲食のみならず、関西ではbP級の会員数を有するグンゼスポーツ、年間60万人の集客力を持つ湯の華廊(有馬温泉と同湯質の天然のスーパー銭湯)、多様な教室を持つカルチャーセンター、さらにはクリニック及び介護センター等の住民にとって必要不可欠の生活サービスを充実させ、文字通り地域の日常生活の中心センターの役割を持ったSCである。

(7)すべて全天候型の駐車場のSC

アメリカではエンクローズドのモール型のRSCをコンクリートのかたまり、巨大な平面駐車場をアスファルトの海といわれ好感を持った言葉では言われていない。再生つかしんは周辺住民への快適性確保の配慮や客の利便性(できるだけ売場に近い駐車場の配置)、さらには雨天や夏の日光の強さへの気配りから、地下駐車場が1,200台用意されている。さらに、高層階へのダイレクトパーキング利用者のための立体駐車場を800台用意し、地下駐・立駐ともすべて全天候型の駐車システムを2,000台導入し、利便性と快適なる駐車場環境としている。また、駐輪場3,500台用意し、地域住民の利便性に対応している。

2.グンゼタウンつかしんの第3の空間としての"場"づくりと"志"商法

家庭でもない職場でもない、家の近くでの異次元空間のある"場"を第3の空間と言う。再生つかしんの"場"づくりは旧つかしんが持っていた商環境の良さを、勝ちパターンのSCとして蘇生させている(もったいない理論)。新生つかしんには4つの"場"を戦略的に設置している。

第1の場は「ロマンチック広場」である。尼崎市の姉妹都市であるドイツのアウグスブルクをデザインテーマとして広場づくりを行っている。ロマンチック広場は、アウグスブルクのロマンチック街道からイメージ展開を行った。ロマンチック街道は元々ローマ帝国の軍用道路であったが、その後のイタリアのルネッサンス時代に、ドイツ国民がこの道を歩いて行けば当時世界の文化の最高先進国であったルネッサンスの国・イタリアへ行けるとのあこがれを潜在的に持った街道である。再生つかしんが地域の住民の新しいライフスタイルへのあこがれを持てるSCに生まれ変わる役割を持ちたいという考えで名付け、地域の顔・地域の待ち合わせの場の役割を持っている。

第2の場は「フードコートAI(あい)」である。グンゼは綾部市で地域の産業振興という高い志を持って設立された繊維会社であった。それゆえに、地域の人々に役に立ちたいという考え方が会社の信条でもあり、グンゼ塚口工場の跡地である再生つかしんも、地域のためになる地域の交流の場として、尼崎市の頭文字のAと伊丹市の頭文字Iを取ってフードコートAI(あい)と名付け、同時に、住民にやさしい・客にやさしいという愛をダブらせている。フードコートAIは、アウグスブルクの街並みをデザイン化し、住民の井戸端会議の場となり、また、外部にテラスゾーンを用意し、気候が良い日には、目の前のカリヨンガーデンの絶景の中で食事やくつろぎができるようになっている。

第3の場は「カリヨンガーデン」である。カリヨンガーデンは景観のすばらしさ(絶景)の中にカリヨンの棟が立ち時刻を示す音がさわやかである。カリヨンガーデンは、外部の飲食店棟の街並みと伊丹川沿いの園芸と噴水を加えたランドスケープによって昼と夜が異なった絶景観をかもしだしている。カリヨンガーデンはグンゼの発祥の地である綾部市を心の理想郷として表現した場であり自然と人工の景観が昼と夜の光演出と融合した"場"となっている。

第4の場は、チャーチ広場である。旧つかしん時代につくられた教会の前にあり、子供やペットと共に遊ぶ場として親しまれてきた。唯一旧つかしんのオープンモールの良さが活用されていた場であったためにチャーチ広場の名を残した。阪神間bP級のペットショップを教会広場に面して導入していることから、子供やペットと一緒に楽しむ場として再生つかしんのアクティブな"場"となっている。

このように、再生つかしんは、"場"を基軸とし、そのデザインテーマをアウグスブルクの景観を取り入れている。これは尼崎市の姉妹都市との関係をより強化するために尼崎市の行政の指導の基に民間親善外交を深めることに役立っている。再生つかしんのデベロッパーであるグンゼグループは、民間外交・地域の商業や産業振興・住民の交流の"場"づくりの立場からのSCのコンセプトを策定し、地域社会との一体化、また社会的役割の高いSCづくりを目指している。再生つかしんは、住民が自慢し、誇りに想うSCづくりを理念とし、中心市街地が本来持つべき街づくりを具体化させている。正に、"志"の商法の実践版である。

再生つかしんは次世代型の1つである地域密着・ライフスタイルRSCづくりに挑戦し、やっと形ができたレベルである。このコンセプトを持続可能とするためには解決しなければならない課題がたくさんある。再生つかしんは、"志"の高さを武器に必ず成功する異色のSCになって欲しい。


 
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