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アメリカ1 の買物の選択肢がエンターテインメントの


「サウス・コースト・プラザ」


 

1.サウス・コースト・プラザの概要と特徴

 
アメリカはSC王国であり、47,000 ヶ所にSCが存在し、小売業の売上の50%強をSCが占めている。そ の中でアメリカ一の売上高を誇るSCがサウス・コースト・プラザである。サウス・コースト・プラザは7 つの核店と270 店の専門店、リース面積18.8 万uを有し、売上高はアメリカbP、売場効率も通常のSCの 2倍高い実績を持つ超繁盛型SCである。サウス・コースト・プラザはSCの中の王者であり、ピンからキ リまでのMDing戦略を取っており、「何でも揃う買物の選択肢が高いSC」との評判があるため、今回事 例として取り上げた。

 サウス・コースト・プラザは、1967 年に開発され、その後3回のリニューアルによりアメリカ一の売上高 のSCとなった。わが国でbPのSCは玉川高島屋SC(1969 年開発)であり、奇しくもほぼサウス・コー スト・プラザと同じ時期に開発されている。

 サウス・コースト・プラザの施設概要と特徴は次の通りである。
(1)圧勝型SC

 競争理論からSCを分類すると、「圧勝型SC」と「棲み分け型SC」の2つがある。圧勝型SCとは MDing的に競争相手を囲い込み、同一商圏内に敵の参入を許さない圧倒的強みを持つSCのことを言 う。一方、棲み分け型SCとは、競争相手と互いに得意分野を棲み分け、商圏内に2つのSCが両立する SCのことを言う。サウス・コースト・プラザは前者の圧勝型SCであり、競争相手から見るとサウス・ コースト・プラザの商圏内には、参入障壁の高いエリアとなる。

 SCの競争理論から見ると、次の4つの基本パターンがある。
 第1のパターンが、サウス・コースト・プラザが位置する圧勝型SCであり、第2のパターン・第3のパ ターン・第4のパターンは棲み分け型SCである。ちなみに、わが国で最強のSCである玉川高島屋SCは 第2のパターンのSCであり、中中〜下を切り捨て、中上から上級までのニーズを中心としたMDing戦 略を取っている。また、わが国のGMSを核とするRSCは第3のパターンであり、中上及び上レベルを捨 て、中中〜中下レベルまでのニーズを中心としたMDing戦略を取っている。 サウス・コースト・プラザは、ピンからキリまでの幅広い商圏内ニーズを、テナントミックスを通じて MDing化しており、圧倒的優位性を持った規模と7つの核店揃え、270 店のテナント数で競争相手を圧 倒し、競争相手の参入を商圏内に許さないSCづくりを行っている。 このような強力かつMDing的にすき間のないピンキリ型SCに対して、周辺のSCではサウス・コー スト・プラザと同質のモール型SCの成立性は、きわめて困難になっている。それゆえに周辺のSCのタス テインマーケットプレイスはパワーセンターとし、アーバイン・スペクトラムはエンターテインメントセン ターとし、ブロックアットオレンジは商店街風SCとし、アナハイムセンターは従来のRSCを解体しパワ ーセンターとし、ファッション・アイランドは中庭風のオープンモールとして、サウス・コースト・プラザ とは異質性を出し、生き残っている。その意味において、サウス・コースト・プラザは、覇権SCと言い、 サウス・コースト・プラザのエリア内SCは覇権SCとの差異化・異質化を明確にしなければ勝ち残るどこ ろか生き残ることもできなくなる。

(2)理想的な多核型SC

 SCの核要素(SCに生活者を引き寄せる基軸)の王道は核店舗である。核店舗以外にバリュー性、エン ターテインメント性、コミュニティ&コミュニケーション性(地域の交流の場)があり、核店舗に依存しな いSCも出現しつつある。しかし、SCの伝統的ではあるが最も強力な核要素はワンストップショッピング &コンパリゾンショッピング性であり、この機能を具体化するテナントが核店舗である。特にアメリカのS Cはゼネラリティ業態の多核店舗による核店舗揃えが基本パターンである。サウス・コースト・プラザの核 店揃えは見事である。アメリカの総合業態のグレードを簡単に示すと次の通りである。
 アメリカのゼネラリティ業態は独自のストアブランド力、自主編集MDingを基軸にターゲット(標的 とする客層)とグレードによって成り立っている。このゼネラリティ業態と専門店との相乗効果システムを 業態化したのがSCである。それゆえに、SCの専門店の成立性の幅と売場効率に核店揃えの適正化は大き な影響を与えることになる。サウス・コースト・プラザは、7つの核店揃えを行っている。上グレードの核 店として「サックス・フィフス・アベニュー」、中上グレードの核店として「ノードストロム」、中中グレー ドの核店舗として「メイシーズ」、「ロビンソン・メイ」「メイシーズ・メン」「メイシーズ・ホーム」、中下 の核店として「シアーズ」の核店揃えは、ピンからキリまでの菱型(中の中グレードがふくらみ、上方向及 び下方向が狭くなる)MDingの核店揃えであり、同時に専門店もラグジュアリーブランドテナントから ポピュラーグレードテナントまでピンキリ型MDingになっている。適正な核店揃えと適切なテナントミ ックスによる相乗効果は、通常のSCの2倍以上の売場効率及びアメリカ一の売上高の成果を生み出してい る。私はアメリカ視察研究のコンサルティングを行う際、視察者から「これだけいいテナントを揃っている から売上高や売場効率が良いはず」という声に対して、その考え方は間違いです!私は「シアーズ(中下グ レードのプロモーショナル百貨店)があるからラグジュアリーブランドが成立している」のですよ、とメカ ニズムに説明している。すなわち、シアーズが中下グレードのマーケットを底辺で支え、次いでメイシーズ (3店)とロビンソン・メイの4店が中の中グレードマーケットを支え、次いでノードストロムが中上グレ ードのマーケットを支え、最後にサックス・フィフス・アベニューが上グレードのマーケットを担っている。 いわゆるマーケットニーズとMDingが菱形の最強パターンのピンキリ商法を導入している。特に、シア ーズ、メイシーズ、ロビンソン・メイ、メイシーズ・メンの4つの核店による中下〜中中グレードマーケッ トを支えるMDingパワーは強力である。大衆ニーズをしっかり抑えながら中下→中中→中上→上グレー ドMDingは、「下から上へ噴水のごとく押し出すようなMDingの仕組み(グレード間の噴水理論と 呼ぶ)により、底辺の中下及び中中グレードの核店舗が、しっかりラグジュアリーブランドのテナントを支 えている。このような強力かつMDing的にすき間のないピンキリ型SCに対して、周辺SCではサウ ス・コースト・プラザとの同質性のSCの成立性を困難にしている(参入障壁の高い覇権型SC)。

 核店揃えの中で、シアーズの位置づけの大切さを述べたが、もう1つの隠れた核店揃えのノウハウは、ニ ーマン・マーカスを導入しなかったことである。高級かつラグジュアリーブランドを超上グレードのニーマ ン・マーカスに担わすのではなく、菱形の噴水MDingにより専門店テナントに担わせたことはデベロッ パーの収支から見て見事である。正に、サウス・コースト・プラザの核店揃えのノウハウは、シアーズの導 入とニーマン・マーカスを導入しなかったことである。

(3)3つのSCが融合した買物の選択肢の高いSC

 サウス・コースト・プラザはピンキリの菱形MDingを行っているため、グレード的に2つの分野に区 分することができる。すなわち、シアーズ、メイシーズ、メイシーズ・メン、ロビンソン・メイの中下〜中 中のグレードの核店舗と、これらの比較購買型の専門店街がまず第1の分野である。次いで第2の分野は、 ノードストロムとサックス・フィフス・アベニューの中上〜上グレードの核店と、これらとの比較購買型専 門店街である。これらの2つの分野でサウス・コースト・プラザは自己完結したSCとしての位置づけにあ り、2つの性格の異なるSCが1つのモールで形成され、生活者にとって選択肢の高いSCとなっている。 さらに、別館にメイシーズ・ホームやクレート&バレルの住関連やボーダーズ(書店)やスポーツ・シヤレ ーの遊関連で構成されるホームデザインセンターのSCが自己完結の姿で立地している。その意味において、 サウス・コースト・プラザは3つの性格の異なるSCが融合したSCと言うことができる。

(4)物を売ることに徹したSC

 SCの成果を上げる要因は、「集客力」(SCに人を集める仕組み)と「販売力」(SCで物を売る仕組み) の2つのタイプがある。すなわち、SCの売上高=客数×客単価で表現され、集客力は客数、販売力は客 単価で数値化される。すなわち、飲食の強化、アミューズメント施設(シネコンやミニテーマパーク)、モ ールのエンターテインメント化等による集客力は抜群であるが、遊び志向が高いため買物比率と客単価が低 くなり、人は集まるが売場効率の低い「もてあそばれ型SC」となる。サウス・コースト・プラザは7つの 核店舗と有力テナントによる販売力は抜群であり、逆にモールのエンターテインメント性は低く、テーマパ ークやシネコンはなく、飲食店も特別に強化されてはいない。すなわち、物を売ることに徹したSCである。 多くのSCが販売力の強化を忘れ、過度に集客力を強化し、客単価と売場効率の低下という悪循環に陥って いるが、サウス・コースト・プラザは、多様化と相乗効果のあるテナントミックスにより高い売場効率を上 げている。

2.サウス・コースト・プラザのエンターテインメント性の要素

 サウス・コースト・プラザは、いわゆるアミューズメント性から発生するエンターテインメント性はない。 強いて言えばメリーゴーランドぐらいである。しかし、サウス・コースト・プラザは、アミューズメント性 から発するエンターテインメントではなく、多核型SC及びラグジュアリーテナントからポピュラーテナン トまで幅広いテナントミックスと相乗効果による買物の選択肢の高さから発する客のよろこび=エンターテ インメント性は高い。SCの本来の持つ買物センターとしての機能を追求しつづけているSCがサウス・コ ースト・プラザである。ヤングからシニアまでの幅広い客層、ポピュラープライスからプレステージまでの 幅広いグレード、それを7つの核店舗と270の専門店で担っているサウス・コースト・プラザは正に客か ら見た買物の選択肢bPのSCである。また、サウス・コースト・プラザの周辺には、ネイバーフッド型 SC、パワーセンター、テーマパーク等が街区として立地しており、オレンジカウンティの中心市街地を形成している。

 サウス・コースト・プラザは伝統的な多核型SCであるが、全米bPの売上を誇っている。しかも、アミ ューズメント性やアメニティ性が希薄なSCでもある。しかし、サウス・コースト・プラザの持つ物販力は 抜群であり、買物の選択肢が著しく高く、客がうれしくてたまらないというエンターテインメント性は、有 力なテナントミックスと、この選択肢の高さから来ている。その意味において、サウス・コースト・プラザ はSCの古典的ではあるが成果の高いワンストップショッピングとコンパリゾンショッピングのテナントミ ックスの優れたノウハウを持つ物販力が最強のSCである。
 
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