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ストリートが最大のエンターテインメントの


「サンタナ・ロウ」



 

 

1.サンタナ・ロウの概要と特徴

 
サンフランシスコ都市圏内のシリコンバレーに、街づくり型複合開発による中心市街地づくりとして「サ ンタナ・ロウ」が2002 年11 月にオープンした。サンタナ・ロウは、オープン直前に火災が発生し、プロジ ェクトの5分の1が消失し、そのためにオープンが2ヶ月間遅れた。さらに、追い討ちをかけるようにハイ テクバブルの崩壊によりターゲットにしていた富裕層の需要が見込めず、散々たるスタートを切った。第1 期は商業ゾーン(小売業と飲食業)と高級賃貸コンドミニアムでスタートしたが商業・住宅ともに空室率の 高い状態でのスタートであった。しかし、現在は見事に初期の課題を克服し、中心市街地の街づくり型の複 合開発のモデルとして賞賛されている。特にサンタナ・ロウは、「ストリート(通り)」が最大の集客要素で あり、通りのエンターテインメント性が、サンタナ・ロウの魅力であるということで、今回の事例として掲 げた。

 サンタナ・ロウの施設概要と特徴は次の通りである。
(1)ニュータウンセンター

 20 世紀の最強業態はSCであるが、21 世紀の最適業態はライフスタイルセンターである。アメリカでは エンクローズド型のRSCに対してアンチテーゼ(もうこれ以上、人工的なモールであるRSCはいらな い!)が起こっており、オープンエアモール志向のライフスタイルセンターが大発展している。このライ フスタイルセンターに中心市街地に位置する複合施設を導入し、商業だけでなく多目的な来街者に対応し た業態がニュータウンセンターである。

 サンタナ・ロウには、物販・飲食・サービステナントが125 店を中心としつつ、外国映画中心のシネア ート・シアター(10 スクリーンの小型シアター)、コンドミニアム(計画中含めると1,200 戸)、ヴァレン シア・ホテル(おしゃれな213 室のホテル)、クラブワンの(2,800 uのアップスケールなスポーツジム) の複合施設であり、シリコンバレーの中心市街地としての顔と役割を持っている。従来のライフスタイル センターは小型かつ商業中心の街づくり型SCであったが、中心市街地としての生活拠点と複合開発はラ イフスタイルセンターと呼ぶよりは、ニュータウンセンターという、より広い概念を持った業態が、サン タナ・ロウと言える。商業施設が対象とする分野は、消費者として安さと利便性を追求する施設(スーパ ーセンターやNSC)から、生活者として新しいライフスタイルを追求する施設(RSC)、さらに、住民 として地域の交流の場を追求する施設(ライフスタイルセンター)へと進化しつつある。サンタナ・ロウ は、ライフスタイルセンターの業態分類に位置づけられるが、単に商業集積という概念から脱し、複合生 活施設を導入することにより、正に中心市街地への立地創造ができたのである。それゆえに、ライフスタ イルセンターがNSCの進化版及びCSCの進化版に対し、サンタナ・ロウはRSCの進化版ということ ができる。

(2)ストリートが最大の集客装置

 サンタナ・ロウは、オープンエアモールのストリート型の街区を形成している。SCの核要素は、王道 としては核店舗であるが、核店舗以外にバリュー性、エンターテインメント性、コミュニティ&コミュニ ケーション性(地域の交流の場)の核機能がある。サンタナ・ロウには過去、ニーマンマーカスの高級百 貨店を導入する予定であったが実現しなかった。現在はマグネットストア(ボーダーズブックス、クレー ト&バレル、ベストバイ、コンテナーストアーズ、将来のスーパーマーケット)によって核店舗機能は補 っているが、サンタナ・ロウの最大の魅力は、中央のストリートである。サンタナ・ロウと名付けられた 中央のストリートは商店街のノスタルジアを感じる街並みを形成し、店舗のファザードと上層階のコンド ミニアムが調和し、さらに街路樹・街路花壇・散策道が一体となり、450mのストリートの長さにより、見 事なオープンエアの臨場感のある“場”を創出している。また、週2回は歩行者天国にしてファーマーズ マーケットを誘致したり、野外映画を開催している。核店舗やバリュー性やエンターテインメント性で集 客する事例は多くあるが、ストリート(通り)を地域の交流の場としての視点から核要素づけているのは ロサンゼルス都市圏のサードストリートプロムナードやザ・グローブアットファーマーズマーケットが見 られるが、中でも、サンタナ・ロウは住宅との一体化で、ストリートの演出をしている施設はごく少ない。 昔の商店街には日本でもアメリカでも人が住み、地域のコミュニティ施設があり、住民と商業施設とコミ ュニティ施設が一体となって形成されていた。その意味においても、サンタナ・ロウは、勝ちパターン化 した商店街の位置づけにある。

(3)ハイイメージの新下駄履き型商業施設

 アメリカにおいても日本においても都心立地や再開発立地において商業と住宅が一体化した下駄履き型 商業施設が開発されたが、商業立地が特別に優れている場合を除いてあまりうまく行っていないケースが 多い。その原因は、下駄履き型商業施設に導入される商業者は地権者等のテナントが中心でありSCのよ うに計画的に相乗効果の出るテナントミックスになっていないことと、下駄履き型商業施設にデザイン性 や第三の空間としての場づくりができていなくて、イメージが良くないことである。サンタナ・ロウは、 このようなイメージを払し、デザインによる演出と有力テナントの導入によりイメージの高い街区を形成 し、このような商業施設のある住宅に住んでみたいと思わせる仕組みができている。デザインにおいても 街全体が自然発生的に出来上がったという演出をするため、各ゾーン別に異なるデザイン会社に依頼し、 各ゾーン別にデザイン面から変化をつけている。多くのアメリカ人は閑静な住宅地を理想的な住環境とし てきたが、商業を中心に各種のコミュニティ施設が一体化した雑多な住宅地の住環境の魅力を持ち始めて いる。ちなみに、イギリスは閑静な住宅地志向であり、日本やアジア諸国は雑多な住宅地志向である。た だし、アメリカでのニューヨークは雑多な住宅地の住環境である。その意味において、ライフスタイルセ ンターやニュータウンセンターは住宅地としての生活環境と商業地としての生活環境を融合させる街並み セツテイン型の複合開発ということができる。

(4)段階的複合開発

 本来の中心市街地は長い時間をかけて発展してきた街区である。SCのように一朝にできたものではな い。サンタナ・ロウの開発も街を一挙に中心市街地として形成するには成立性に課題があるため、街を計 画的に成熟させる開発手法を取っている。第一期計画はリテールとコンドミニアムでスタートし、第二期 は、通りの裏側にカテゴリーキラーゾーンを用意し、ベストバイとコンテナーショップを導入し、第三期 に外国映画を上演する10 スクリーンの小型シネコンを導入し、第四期には、第一期で火災を起こし消失し たコンドミニアムを開発し、第五期はアップスケールなスーパーマーケットを予定している。第六期以降 も次々と第2のホテルやコンドミニアム、さらには商業施設を計画中であり、サンタナ・ロウの中心市街 地の街づくりは徐々にではあるが確実に成熟化が進むことになる。この計画的な手法による街の成熟化戦 略により、サンタナ・ロウの売場効率は当初は存続さえ危ぶまれたが、今や、RSCの売場効率を大きく 上回り、さらに高い成長率を示している。

(5))客から見たもう一つのSC

 タウンリゾート志向のSCの王道は日米ともにRSCである。しかし、客は自らのマーケットの中で選 択肢のあるショッピング行動を取りたいために2つの正規なSCと1つの異質なSCを望む。この考え方 を2.5 の選択肢の原則と言う。事実、サンタナ・ロウが開発されるまでは、このエリアには超繁盛型SC のヴァレー・フェア・モールとスタンフォードSCが立地しており、この2つの繁盛型SCが2.0 を形成 し、そして新たに開発された異質型SCのサンタナ・ロウが0.5 の位置づけにある。特に、サンタナ・ロ ウの隣接地にはエンクローズドモールのRSCであるヴァレー・フェア・モールが立地している。それに より、従来型のエンクローズドモールのRSCであるヴァレー・フェア・モールと異質型のオープンエア モールサンタナ・ロウがあたかもロサンゼルスでの二大集客ゾーンである「サンタモニカプレイスとサー ドストリート」及び「ザ・グローブとファーマーズマーケット」のように、デジタル志向のSCとアナロ グ志向の新商店街が融合している現象と同じである。ヴァレー・フェア・モールはノードストローム、メ イシーズ、メイシーズメン&ホームの3核と241 のテナントによって形成される地域bPの売上高を誇る 繁盛型SCである。客はヴァレー・フェア・モールに基本的には満足している。しかし、一定の満足は次 なる満足を誘発する。正に、サンタナ・ロウは、客から見て、ヴァレー・フェア・モール以外に、もう1 つの生活の異なるSCが欲しいとの潜在的な要望に応えた「もう1つのSC」である。客は必ず選択肢を 求める。ヴァレー・フェア・モールとスタンフォードSCは、3割差異化・特化、7割ゼネラルによる棲 み分け型の関係にある。互いにRSCではあるが、互いに3割の差異化、差異化した分野は特化(相手を 圧勝)し、残り7割は互いに同質化する勝ちパターンの手法を導入し、互いに超繁盛型SCとなっている (ただし、客からは7割差異化に見えなければならない)。一方、ヴァレー・フェア・モールとサンタナ・ ロウは、客の回遊的には1つのSCであり、性格の異なるSCの融合した関係にある。最近、RSCもラ イフスタイルセンター化の傾向に対応して、オープンモールを取り入れようとしているが、エンクローズ ドモールの魅力も捨てがたい場合に、エンクローズドモールを基軸とし、オープンエアモールを付加する ハイブリッドモール型SCを展開する場合が多い。正に、サンタナ・ロウとヴァレー・フェア・モールの 関係は、ハイブリッドモールの関係であり、サンタナ・ロウがオープンエアモールの異質型街区を受け持 っているのである。客は欲張りな面を持っており、1つの満足(ヴァレー・フェア・モール)が達成でき れば次のステップの満足を潜在的に欲求(サンタナ・ロウ)するようになるため、売り手の潜在的ビジネ スチャンスは増大することになる。

2.サンタナ・ロウのエンターテインメント性の要素

 サンタナ・ロウは、中心市街地の役割を持つニュータウンセンターである。ゼネラリティ業態の百貨店や PDSではないスペシャリティSCである。このサンタナ・ロウのエンターテインメント性は次の通りであ る。

(1)人が集い、散策するのがエンターテインメント

 ライフスタイルセンターは中小商圏立地での人が集い散策する第3の空間(家庭・職場以外の異次元空 間)であるに対して、広域商圏立地での人が集い散策する第3の空間が、ニュータウンセンターである。 サンタナ・ロウはサンノゼ市を中心にするシリコンバレーの中心市街地の役割を持つ“場”として開発さ れ、メインストリートを基軸に街区が形成され、正に、ストリートで集い散策することが楽しい・うれし いのエンターテイメントを構築している。これは隣接するヴァレー・フェア・モールとの相乗効果と波及 効果によって成り立っている。サンタナ・ロウの集客の最大の機能は、ストリート(通り)であるとの由 縁はサンタナ・ロウのストリートと建物(低層階は商業・中高層階は住宅)との見事な融合から来ている。

(2)おしゃれな下駄履き店舗と住宅の一体化がエンターテインメント

 いい所に住んでいるわね!と言われるのが住民の誇りであり自慢である。通常の下駄履き店舗と住宅の 一体化は、イメージが悪いが、サンタナ・ロウのように、有名テナントと街全体のデザイン化によるイメ ージの高さは、コンドミニアムや周辺に住む住民にとって誇りになり自慢となる。本来、商業と住民は必 ずしも合い入れるものではない面が多いが、サンタナ・ロウは、街区に店舗と商業を融合されることによ り住宅の付加価値が高まると同時に、商業にとっても需要増になっている。

(3)性格の異なるSCが2つ隣接しているのがエンターテインメント

 サンタナ・ロウの新商店街志向のオープンエアモールの商業街区に対して、隣接するヴァレー・フェア・ モールはエンクローズドモールのRSCであり、互いに回遊上に立地し、互いに相乗効果と波及効果があ り、客にとって、2つの選択肢を持つことができる。自らの目的と動機に基づき、2つのSCを選択でき ることは、客にとっての最大のエンターテインメントである。

 サンタナ・ロウは、当初、火災によるオープンの延期とハイテクバブルの崩壊により、苦難の出発を余儀 なくされた。しかし、立地条件の良さと計画的な街の成熟戦略と適切なテナントミックスにより、見事に初 期の課題を解決し、繁盛型SCの道を歩んでいる。サンタナ・ロウのビジネスモデルは、今後の日本の市街 地の活性化に参考になるSCである。
 
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