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「ノードストローム物語

 

 

 アメリカの百貨店業界は、フェデレイテッドデパートメントグループの1.0と、ノードストローム及びニーマン・マーカスの0.5(0.5は複数)の1.5体制になっていますが、本来の2.5体制のエアポケット理論に基づき、ノードストロームが客の選択肢の要望が高まりにより、1.0に成長しつつあります。 ノードストロームの強さのメカニズムを要約すると、次の通りです(六車流:流通理論)(視点744、742、591、487を再編集したものです)。

@ノードストロームは「アフォーダブル・ラグジュアリー」戦略を取り入れた百貨店

 アメリカの総合業態のグレードから見たノードストロームのポジショニングは次の通りです。



 ノードストロームは「アッパーミドル(中上レベルの客層)」を主力ターゲットにしています。また。ノードストロームの総合業態のグレード格も「中上グレード業態」であり、いわゆるアフォーダブル・ラグジュアリー(手の届く範囲の贅沢)のポジショニングを確保しています。アフォーダブル・ラグジュアリーは、アッパーミドル層にとっては日常ニーズであり、ミドル層及びロアー層にとっては非日常として利用可能な範囲内のポジショニングにあります。その意味において、百貨店としての店格を維持するMDingのグレードとしては、マーケットの一番多いニーズを対象としています。いわゆる「日常の中の新」(いつもの生活の中で、新しいことや変化を求めるニーズ)に対応した百貨店であり、ニーマン・マーカスやサックス・フィフス・アベニューのような百貨店・百貨店化したニッチマーケットを対象としていません。

Aシューズを基軸とした3割差異化・特化、7割総合化戦略を取り入れた百貨店

 ノードストロームは靴屋出身の百貨店です。そのため、靴売場は圧倒的な強さを持ち、ノードストロームの総売上高のうち20%の2,055億円が靴の売上高です。



 流通業界の勝ちパターン戦略の1つに「3割差異化・特化、7割総合化の原則」があります。すなわち、特定の分野で競争相手と差異化しなさい。差異化した以上は、その分野は特化(競争相手を圧倒)しなさい。残り7割は競争相手と同じでいいですよ・・・との概念の戦略手法です。ノードストロームは、シューズ(シューズは誰でも利用する大きなマーケット)を競争相手との差異化要因とし、かつ特化要因とする3割差異化・特化戦略を導入しています。出身母体である靴屋の固有の特性を活用し、競争相手の真似のできない分野で、客に対して靴に強い百貨店という強力なイメージ形成を行っています。

 1つの分野が徹底的に強いと、商圏の拡大や集客力が飛躍的に高まり、その飛躍的に高まった集客力が他の分野にも波及するメカニズムは、多くの事例で成果の高い戦略として実証されています。

B平場展開による売場のカジュアル化戦略

 アメリカの百貨店は、日本の都市型百貨店(商圏人口100〜600万人)と異なり、郊外立地、SC内立地、小商圏立地(商圏人口40〜60万人)の百貨店です。つまり、少頻度・広域来街者を対象とするのではなく、中頻度・中域来街者を対象とする百貨店です。それゆえに、非日常性の百貨店ではなく、日常性の中で新しさを求める「日常の中の新」の位置づけが百貨店を成立させる基本としています。ノードストロームは、基本的にはハコ型の売場づくりの百貨店ではなく、平場を中心とした売場形成の気軽に来店できる百貨店となっています。しかし、平場といっても、洗練されたビジュアルMDingによって百貨店としての店格とイメージを確立しています。いわゆる戦略平場の形成です。これにより、売場全体のカジュアル性が保たれ、かつ、百貨店としてのイメージが演出できています。

Cターゲットは、概念絞り込み客層オール対応戦略を導入した百貨店

 ニーマン・マーカスが対象とするエイジ(年齢)は、43歳〜64歳(エイジ倍数は1.5倍)、サックス・フィフス・アベニューが対象とするエイジは33〜55歳(エイジ倍数は1.6倍)です。ノードストロームが対象とするエイジは「25〜64歳」(エイジ倍数は2.6倍)と、他の百貨店よりもかなり幅広い客層を持っています。いわゆる客層のピンキリ商法を導入しています。すなわち、ヤングからキャリア、さらにはアダルト、ミッシー、ミセス、シニアまでの幅広い客にも買う物がある売場を形成しているのです。しかし、客層の幅が広いと誰にでも対応でき有利な一方で、特色がなくなり結果的に売れない店になりがちです。ノードストロームは、30〜40歳代を概念的に基軸ターゲットとし、その上で20代の客にも、50代・60代の客にも買う物がある売場を形成しています。この客層戦略を「概念絞り込み(30代・40代)客層オール対応(25〜64歳)」と言い、これは勝ちパターンの戦略手法です。エイジ倍数は、他の百貨店の1.6〜1.7倍であり、幅広い客層を対象としています。それが、マーケットのマス化を招き、大きな売上げに結びついています。

D価格帯の幅を大きく取る戦略を導入した百貨店

 アメリカの百貨店はグレードによって格が決まっており、プライスゾーンは比較的狭くなっています。メイシーズのプライスゾーンは比較的狭く、40〜120ドル、基軸プライスラインは80ドルで、プライス倍数は3.0倍です。ニーマン・マーカスのプライスゾーンは300〜1,500ドル、基軸プライスラインは800ドル(プライス倍数は5.0倍)です。ところが、ノードストロームのプライスゾーンは、下は70〜100ドル(メイシーズレベル)から上は、1,000ドル(ニーマン・マーカスレベル)までと幅広く、基軸プライスラインは200〜300ドルであり、プライス倍数は10.0倍となっています。このように、基軸プライスラインは、メイシーズの上、ニーマン・マーカスやサックス・フィフス・アベニューの下のアフォーダブル・ラグジュアリー(中の上)の位置づけにありますが、プライスゾーンは中の中から上まで幅広く対応することにより、マーケットのマス化を行っています。小商圏で1つの業態を成立させるためには「価格のピンキリ商法」が必要ですが、ノードストロームはピンキリ商法を導入して成功しています。

E高度な顧客サービスの付加による独自固有のブランド戦略を導入した百貨店

 ノードストロームの独自商品(PBを中心としたノードストロームでしか売っていない商品)は30%程度です。それ以外の70%は仕入商品です。しかし、自主編集売場(メーカー単位の売場ではなく、自らが目指すライフスタイルに基づく売場づくり)と買い取り方式、さらに、店員による卓越した顧客サービス(こんなことをして欲しかった!!やこんな生活があったのか、のライフスタイルの提案をノードストローム流のサービス精神で徹底追求)で、客は「ノードストロームで買った」という店レベルでのブランド力(独自固有のブランド力)を創出しています。ノートストロムは売り手が持つ製品レベルのブランドを買い手のニーズとウォウンツに合わせる商品レベルのブランドに変えています。いわゆる他人がつくった商品をあたかも自分の商品として売る小売業の本来のノウハウが、ノードストロームは他の百貨店より優れています。

FMDingにトラッド&エレガンスを基軸にライフスタイル化戦略を導入した百貨店

 ノードストロームのMDingのコンセプトはトラッド(メンズ)とエレガンス(レディース)の売場でまとめ、オーソドックスで、全ての客に共通性のある商品構成を取り入れています。

 すなわち、ノードストロームは、ノードストロームが目指すライフスタイルを基軸として、MDing戦略、プライス戦略、エイジ戦略を導入して成功しています。

 百貨店業態は、業態化レベルとライフスタイル化レベルとカスタマイズ化レベルの3つのレベルに分類されます。業態化レベルとは、ビジネスのパターンであり、取扱商品、価格、利用頻度、売り方、見せ方等を1つの概念で括ることです。ビジネスモデルとしては、一番初期のレベルです。日本の百貨店は、この業態化レベルであり、それゆえに、どこの百貨店にも類似性が多く、店レベルや企業レベルで区別がつきません。

 ライフスタイル化とは、業態が対象とする「客及び客の集合体であるマーケットの生活(ライフ)を1つのスタイルとして独立した人格化及び価格化」することです。アメリカの百貨店は業態レベルからライフスタイル化レベルに達し、目指すライフスタイルの違いから各企業の類似性は少なく、一目で区別できます。

 カスタマイズ化とは、ライフスタイル化された客及びマーケットを「客の好みに合わせ、あなた好みの店づくり」をすることです。逆に言うと、自分の目指す客以外の客は相手にしない店づくりを意味します。

 ノードストロームは、百貨店のビジネスモデルのうち、進化のライフスタイル化のレベルであり、独自の客を自らが提案するライフスタイルで囲い込み、「ノードストローム・スタイル」を創出しています。アメリカの百貨店は基本的にはライフスタイル化レベルですが、ノードストロームはライフスタイル化の深化が他の百貨店よりも進んでいます。また、カスタマイズ化の代表がニーマン・マーカスですが、ノードストロームはニーマン・マーカスと同様に卓越した顧客サービスによるカスタマイズ化が行われており、「3割カスタマイズ化、7割ライフスタイル化した店」で、両方の概念を適切に導入しています。

GビジュアルMDingと店舗イメージによる独自の演出戦略を導入した百貨店

 ノードストロームのビジュアルMDingや店舗イメージは、ニーマン・マーカスやサックス・フィフス・アベニューの高級な店舗イメージや、メイシーズの大衆的かつ明るさを基調とした店舗イメージとは異なる独特の雰囲気を持っています。平場を基軸とする商品グループのゾーニング、マネキン、ディスプレー、照明、壁や柱回りの利用方法・・・等によるビジュアルMDingは見事です。このノードストロームが持つ店舗イメージは30代〜40代の客層に支持されることはもちろん、ヤングやシニアにも馴染める普遍性のある雰囲気を持ち、かつ、百貨店としての店格を維持しています。

 商品の見せ方には、「スッキリ型」(商品が整然と並べられた陳列手法)と「モリモリ型」(商品が森のように秩序正しく並べられている陳列手法)と「スカスカ型」(空間を多くとり生活提案中心の並べ方をする陳列手法)と「ヤマヤマ型」(商品を山のように積み重ねて並べる陳列手法)・・・等がありますが、ノードストロームは、モリモリ型の陳列手法であり、商品の豊富感があり、生活提案性の臨場感ある売場を形成しています。特に、ノードストロームが得意とする靴売場は、まさにモリモリ型の売場づくりです。

H井戸端会議の場づくり戦略を導入した百貨店

 ノードストロームは1階にバー(コーヒーカフェ)、最上階(2〜3階)にカフェ(イートカフェ)を導入して、売場の中にオアシス機能を付加しています。また、売場の至るところにソファーがあり、かつ、ピアノ演奏を行い、いやしのムード感を高めています。このように、ノードストロームは客の井戸端会議の場として親しみ性のある場と多様な人々にわたる集客力を演出することにより、オアシス百貨店を形成しています。

 このように、ノードストロームは郊外立地・SC内立地・小商圏立地に進化した百貨店なのです。


 
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