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LOHASがエンターテインメントの


「自然・健康食品スーパーの御三家」
〜ホール・フーズ、ワイルド・オーツ、バイタミン・カテッジ〜


 

 

 

1.自然・健康食品スーパーの御三家の概要と特徴

 
アメリカ中西部のコロラド州にロハス(LOHAS=Lifestyles of Health&Sustainability=健康と地球の持続可能性を志向するライフスタイルという意味)のメッカのボルダー市がある。ボルダー市は、ロッキー山脈のふもとの海抜2,000m地点にあり、自然に恵まれ、アウトドアのメッカとして、また、コロラド大学の学園都市でもあり、正にロハスそのものの性格を持ったまちである。また、ボルダー市はロハスを生活のコンセプトとした地域であり、ロハスを事業のマーケティング戦略として活用した企業が多く存在している。ロハスは人間と企業と地球のネットワークにより、21世紀の新しいライフスタイル及び新しいビジネスチャンスとして育ちつつある。このボルダー市の中に、ロハスをコンセプトとした自然・健康食品スーパーが三企業展開している。その名は「ホール・フーズ」「ワイルド・オーツ」「バイタミン・カテッジ」の自然・健康食品スーパーの御三家である。ロハスのメッカであるボルダーで安心・安全の食生活を提供できることがエンターテインメント(うれしい)であるとの理由で自然・健康食品スーパーの御三家を事例として取り上げた。
 自然・健康食品スーパーの御三家の概要と特徴は次の通りである。

(1)自然・健康食品のスーパー


 ロハスのメッカのボルダー市で君臨するホールフーズ、ワイルド・オーツ、バイタミン・カテッジは自然・健康食品スーパーであり、SM業界での位置づけは次の通りである。
 今、アメリカのSM業界は大変革期にある。従来型のスタンダードなスーパーであるクロガーやセーフウェイやアルバートソンズ(解体)がウォルマートの低価格・総合業態であるスーパーセンターに力敗けし苦戦している。一方、ウォルマートのスーパーセンターとの異質化が可能なグルメスーパーやナチュラル&ヘルス食品スーパーが健闘している。ウォルマートのスーパーセンターへの対抗手段としてグルメと健康は食品業態にとっては有効な手段である。ホール・フーズ、ワイルド・オーツ、バイタミン・カテッジはスタンダードな食品スーパーのみならずウォルマート・スーパーセンターとの異質化も明確であり、また地球環境にやさしいSMや健康志向のSMの21世紀型の業態として高い成長を示している。正に、ロハス化したSMの位置づけにある。また、アメリカの流通業界では、一つのマーケットの中には、2.0の正規な企業と0.5のニッチな企業のみが成立するという原則がある。自然・健康食品マーケット業界では、ホール・フーズとワイルド・オーツが2.0企業であり、バイタミン・カテッジが0.5企業である。

(2)自然・健康食品スーパーの御三家の特徴の比較

 ロハスをコンセプト(本来のロハスの持つ固有の特性を追求した概念)を基軸に置くか、ロハスをマーケティング(本来のロハスの持つ固有の特性をビジネスチャンスとして展開する概念)を基軸に置くかによって事業としての成果である売上高が大きく異なる。

 ボルダー市にはホール・フーズ、ワイルド・オーツ、バイタミン・カテッジ以外に小型店舗でベジタリアンを基軸ターゲットとする「ボルダー・コープ」(消費者が組織する生協)がある。このボルダー・コープは、これぞオーガニック食品スーパーの本質と言われる自然・健康食品スーパーである。木から落ちた果物でないと食べないとか、少しいたんでいるのが本物の果物や野菜であるとか、自然の原始的なままの食品を売る店である。御三家にボルダー・コープを加えた4つの自然・健康食品スーパーを比較・分析すると次の通りである。
 食品に占めるオーガニック食品比率はボルダー・コープとバイタミン・カテッジが100%である。ただ、バイタミン・カテッジはオーガニック食品を企業システム・店舗システムで展開しているに対し、ボルダー・コープは生業レベルの店舗運営で行っている。それゆえに特定の限られた客を対象とする店となっており事業とは言えない。

 ワイルド・オーツはオーガニック食品の比率は70%であり、残りは一般の食品(非オーガニック食品)である。一方、ホール・フーズのオーガニック食品の比率は30%程度であり残りは中食志向のグルメ食品である。

 このオーガニック食品の比率は対象とするマーケットの大きさに影響する。すなわち、ボルダー・コープは特定の客のための特定の店でありカスタマイズ化(客が自分の店と感じる割合)は高いが、客層の幅は狭くニッチなマーケットしか対象とならない。一方、ホール・フーズはオーガニック食品比率は30%程度と低く、残り70%は客層の幅の大きいグルメ食品ニーズである。グルメ食品は所得格差、健康趣向の有無、地域格差に関係なくニーズの高い商品である。このホール・フーズの自然・健康食品とグルメ食品の戦略的整合性があり相乗効果が高い。このように対象とするマーケットの大きさにより、自然・健康食品スーパーの売上高が大きく異なる。推定ではあるが、対象とするマーケットの一番小さいボルダー・コープの売上高は5億円、ボルダー・コープより対象とするマーケットが大きいバイタミン・カテッジの売上高は10億円、バイタミン・カテッジより対象とするマーケットが大きいワイルド・オーツは20億円、さらにワイルド・オーツより対象マーケットが大きいホール・フーズは40億円となっている(あくまでも筆者の推定)。多くの人がオーガニック食品の必要性は認めているが、オーガニック食品のマーケットは主流ではない。それゆえに、オーガニック食品のウエイトの高さは、今現在ではマーケットのニッチ化に結びついている。つまり、オーガニック食品による客層の狭小化は、対象とする客から見るとカスタマイズ化(御用達の店)となり敵の参入障壁の高い店となるが、逆に売上高を得ることが困難となる。カスタマイズ化(ここではオーガニック食品が要因)は必然的にマーケットの狭小化を招くが、客の特定の生活を支援するライフスタイル化(ここではグルメ食品が要因)は、逆にマーケットを拡大させることが出来る。それゆえに、ボルダー・コープは一店舗のみ、バイタミン・カテッジは26店舗のローカルチェーン、ワイルド・オーツは113店舗のリージョナルチェーン、ホール・フーズは175店のナショナルチェーンと、企業規模と店舗数が著しく異なっている。

 ボルダー・コープとバイタミン・カテッジはロハスをコンセプトとして展開しているに対して、ホール・フーズはロハスをマーケティングとして展開している。ワイルド・オーツはその中間として位置づけられ、真正な自然・健康食品のスーパーとしての認知を守っている。ボルダー・コープはガチガチの自然・健康食品のスーパーと認知され、ホール・フーズは、健康志向のグルメ食品スーパーとして認知されている。

(3)ホール・フーズの成功のメカニズム

 ボルダー市の自然・健康食品スーパーの御三家の一つであるホール・フーズはアメリカSM業界の中で異色かつ大成功している企業である。ホール・フーズは175店舗と5,600億円の売上高の企業に成長している。

 ホール・フーズの特徴と成功のメカニズムは次の通りである。

 @健康とグルメな食生活を支えるライフスタイルのSM

 ホール・フーズは、オーガニック食品の割合は30%程度であり、残り70%はグルメ食品のMDingである。すなわち、ホール・フーズはグルメ食品に基軸を置き、オーガニック食品を積極的に導入することにより、健康に気を使ったグルメ食品のSMというイメージを構築し、幅広い客層に支持される仕組みをつくっている。ホール・フーズは最初はオーガニック食品専用の店としてスタート(ロハスをコンセプトとした真正自然・健康食品スーパー)であったが、全国チェーンとして展開して行くうちに、ロハスをマーケティングとして活用する健康志向のグルメのSMに変化して行った。SM市場のマーケットは、高級食品ニーズが5%、自然・健康食品ニーズが15%、グルメ食品ニーズが30%、一般食品ニーズが50%(うち価格徹底重視ニーズが15%)と推定される。バイタミン・カテッジはSMニーズのうち15%、ホール・フーズは45%、ワイルド・オーツはその中間の30%を対象としているために企業から見た客層が大きく異なり、その結果、企業規模に反映されている。また、ホール・フーズは取り扱いアイテム数は2万アイテムと健康・グルメ食品スーパーでありながら、一般のSM並の品揃えを行っている。

 A3割差異化、特化・7割総合化の原則を適用したSM

 流通業界の棲み分け型の勝ちパターンの中に、「競争相手より特定の分野で3割差異化しなさい。差異化した分野は圧勝しなさい。残り7割は逆に総合化した方が業績は高くなる」との3割差異化・特化・7割総合化の原則がある。ホール・フーズはオーガニック食品を武器に3割差異化・特化を行い、残り7割はグルメ食品や一般食品を豊富に揃え、健康に気を付けたグルメSM(3割がオーガニック商品であるのに、客から見ると7割が健康食品に見える)の位置づけを確立している。

 3割差異化・特化・7割総合化の原則を適用する際に、ホール・フーズは3割差異化・特化の分野をオーガニック食品を中心とした自然・健康食品に置いている。問題は残り7割の総合化の分野である。ワイルド・オーツは非オーガニック食品分野は一般の食品を置いているが、ホール・フーズは中食を中心としたグルメ食品を置いている。健康食品とグルメ食品の組合せの整合性は抜群である。健康食品と一般食品の組合せ(対象マーケットの65%)であれば対象とするマーケットは大きくなるが敵の参入障壁は低く、競争対応力も低くなる。そのために参入障壁の高いオーガニック食品のウエイトを高くせざるを得なくなり、結果的にマーケットの狭小化に結びつく。健康食品とグルメ食品の組合せ(対象マーケットの45%)は対象とするマーケットは中以上のレベルで取り込めることが出来、かつ敵の参入障壁は高く、競争対応力は高くなる。しかも、健康食品とグルメ食品の整合性・相乗効果は著しく高い。ホール・フーズは、ワイルド・オーツやバイタミン・カテッジの自然・健康食品スーパーとウエッグマンズ(アメリカのグルメスーパーの最有力チェーン店)の両方の長所を融合させた強力なハイブリッド型SMである。

2.ロハス・ビジネスと流通

(1)ロハスの概念と取り組み方

 健康と地球の持続可能性を志向するライフスタイルであるロハスは生活のコンセプトであり企業のマーケティング戦略としても用いられている。今回の事例で紹介した自然・健康食品のスーパー御三家が展型である。ロハスは「サステナブル・エコノミー」(持続可能な経済)、「ヘルシー・ライフスタイル」(健康的な生活様式)、「オルタナティブ・ヘルスケア」(代替医療・自然医療)、「パーソナル・デベロップメント」(自己開発)、「エコロジカル・ライフスタイル」(環境に配慮した生活様式)の5つの要素から成り立っている。この概念に相当する人口割合はアメリカで23%、日本で29%(狩猟民族よりも農耕民族である日本人の方がロハス層が多くなっている)となっており、ロハスは21世紀のライフスタイルの基軸となりつつある。当然ながら、流通業界においても無視することが出来ない位置づけになっている。商業施設の開発や運営、さらにはMDingにおいてもロハスの概念が導入される必然性が高まっている。流通企業がロハスの概念を導入する手法として、「ロハス・コンセプト重視で真正ロハス型商業」を目指すのか、「ロハス・マーケティング重視でロハスによる新しいビジネスチャンスへの挑戦型商業」を目指すのかの二つの考え方がある。今回の事例研究で言えば、バイタミン・カテッジやボルダー・コープは前者であり、ホール・フーズは後者である。これは企業のポリシーの違いであり、どちらが望ましいかの問題ではない。いずれにしても、ロハスの概念は20世紀の反省から生まれた21世紀型のライフスタイルであり、今後の我々の生活のみならず政治・経済・社会的分野で展開されなければならない。

(2)ロハスとSC

 ロハスの概念をSCという業態に導入した業態が「ライフスタイルセンター」である。 筆者は、SCは20世紀の最強の業態であるが、ライフスタイルセンターは21世紀の最適業態と定義している。ライフスタイルセンターは、「自然環境・建築デザイン環境・体験環境と融合したSC」「人的ふれあいのある地域密着性と融合したSC」「生活提案性と融合したSC」「街づくりと融合したSC」である。正にライフスタイルセンターは、ロハス・マーケティングに基づき開発されたSCであり、21世紀の最適(最強ではない)なる業態であると言える。アメリカのSC業態では従来型の多核・モール型(エンクローズドモールのRSC)は、ほとんど開発されておらず、ほとんどがライフスタイルセンター及びライフスタイルセンターを多目的化・大規模化したタウンセンターが開発の中心となっている。SC業界でもロハスの影が着々と迫っている。

 今回は21世紀のライフスタイルであるロハスをコンセプトとし、ロハスをマーケティング戦略化した事例として自然・健康食品のスーパー御三家を紹介し、成功のメカニズムを説明した。同じロハスの概念を企業の経営戦略に取り入れるとしても様々な手法がある。流通企業においてもロハスは避けては通れない道であり、今後、各流通企業が、どのような手法でロハスをビジネスとして展開していくかが楽しみである。
 
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