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寒冷地のオアシスとしてのSCがエンターテインメントの


「カルフール・ラバル」


 

1.カルフール・ラバルの概要と特徴

 
カナダのモントリオール(都市人口180 万人、都市圏人口360 万人)の郊外に寒冷エリアの季候にうまく 適合させたタウンセンターが2002 年に大幅増床によるイメージ一新でリニューアルオープンした。本来のタ ウンセンターは地域の顔となる多目的なSCであり、オープンエアモールが基本であるが、カナダは冬は寒 冷エリアであるため、カルフール・ラバルはタウンセンターを全天候型のエンクローズドモールで開発し、 地域のオアシスとして人気を博しているため今回事例として取り上げた。カルフール・ラバルは1974 年に誕 生したが2002 年に営業面積の大幅増床、新たな核店と専門店の導入、多層式の立体駐車場(1,800 台)を新 設し、今日の姿に再生された。

 カルフールとは交差点とか出会い(交流の場)を意味し、ラバルはモントリオールの郊外都市名である。 カルフール・ラバルのキャッチフレーズはVotre・Centre・A・La・Mode(あなたにとっての流行の中心地) であり、9つの核店舗と280 店の専門店からなる多核・モール型SCである。
 
 カルフール・ラバルの概要と特徴は次の通りである。
(1)寒冷エリアのオアシス型SC

 大都市の中心市街地は自然発生的に出来たためにオープンエアモールが一般的である。ただ例外的に、ミ ネアポリスのダウンタウンは「スカイウォーク」によって各オフィスビルや商業ビルを空中で結び寒さを防 いでいる。また、モントリオールのダウンタウンは「アンダーグランドシティ」により地下街、オフィスビ ル、商業ビルを地下で結び寒さ対策を行っている。今、アメリカのSC業界では気候に関係なくオープン・ エアモールのライフスタイルセンターやタウンセンターが続々と開発されている。しかし、寒冷エリアのカ ナダにとってはオープン・エアモールは厳しい面がある。エドモントンモール(エドモントン市)やモール オブアメリカ(ミネアポリス市)もエンクローズドモールの寒冷対策のSCである。エドモントンモールや モールオブアメリカは、寒冷エリアのオアシス型SCであるが、地元客というより観光客やレジャー客を対 象とした大型エンターテインメント型SCである。今回取り上げたカルフール・ラバルは、モントリオール の寒冷エリアに立地する地域の114 万人商圏を対象とするSCであり、エドモントンモールやモールオブア メリカの観光客・レジャー客を主力ターゲットとするSCとは異なる。カルフール・ラバルは9店の核店、 280 店の専門店、それをレーストラック型のエンクローズドモールでつなぎ、全天候性の空調機能による快 適空間は、正に、寒冷エリアのオアシス型SCである。

(2)オープンエアモールのタウンセンター

 アメリカでポストモール型SCとして注目されているライフスタイルセンター、さらに、ライフスタイル センターを大規模化し、多目的性を持たせ、街並セッティングをすることによりタウンセンター化したSC が続々と開発され人気を博している。ビクトリア・ガーデンズ、イーストン・タウンセンター、シティ・プ レイス…等がその代表である。ただ、タウンセンターは元々はダウンタウンに立地していた中心市街地を新 しい時代に適合した形で、車社会に対応した郊外立地に開発されたものである。それゆえに、100 年以上の 歴史を有した自然発生的なオープンエアが基本である。しかしながら、カルフール・ラバルは寒冷エリアの 気候を考慮してエンクローズドモールの形で、タウンセンターを実現させている。カルフール・ラバルは、 商業施設の規模がモントリオール都市圏でbPであり、また核店揃えやテナントミックスのレベル及びバラ エティさもbPであり、文字通り、地域の顔であり、コミュニティ&コミュニケーションの場(地域の交流 の場)となっている。同時に、ワンフロアに総延距離1,200m(推定)の散策モールがありランブリング及 びウインドショッピングの“場”を提供している。さらに、屋内公園(植物園風公園)(LES・JARDINS) を設置し、自然光と緑と花、さらに小鳥のカゴを用意し、人工的ではあるが、いやし空間を提供している。 また、各所にイベント広場を用意しカフェと一体化し“場”を創出し、また、大規模なフードコート(FOI RE・ALIMENTAIRE)を配置している。カルフール・ラバルの中にはないが、周辺の隣接エリアには、シ ネコン等のエンターテインメント施設や総合スポーツ施設、さらにはオフィスビルやホテルも付随しており、 文字通り、エリア全体でタウンセンター機能を充実させている。それゆえに、エンクローズドモールのタウ ンセンターあるいはライフスタイルセンター志向のRSCと呼ぶことが出来る。

(3)スペシャリティ百貨店化したメガストアの核店揃え

 SCの核店の役割はSCの商圏形成力と専門店の成立力である。最近はSCの商圏形成力と専門店の成立 力はバリュー性やエンターテインメント性やコミュニティ&コミュニケーション性の核店舗ではない核要素 も発揮するようになっている。それゆえに、核店舗のウエイトが少ないSC(例えばライフスタイルセンタ ー)も出現している。ただ、SCの王道はワンストップショッピング&コンパリゾンショッピング機能を基 軸とする核店舗揃えであることは間違いない。しかし、総合業態(衣・食・住・余暇の生活全体に対応する フルラインの業態)はアメリカでは1970 年代から、わが国でも1990 年代からSCの核店舗としての役割で ある商圏形成力と専門店の成立力は弱体化している。旧大店法の厳しい1991 年以前のCSCは総合業態とし てのGMSが核店舗となりCSCの商圏形成力と専門店の成立力を発揮していた。現在のRSCの商圏形成 力はモール型専門店街とエンターテインメント性であり、専門店の成立性はモールという仕組みと強力にな った専門店のMDingの相乗効果による独自集客化である。総合業態はGMSの10 万アイテムによる選択 肢では通用せず15〜20 アイテムによる選択肢でなければ通用しなくなっている。日本型スーパーセンターが 「何でもある総合業態」として発展しているのは従来の総合業態の選択肢に革命を起こしたからである。一 方、GMSは脱総合業態の方向としてカジュアル百貨店あるいはスペシャリティGMSの道を歩みつつある。

 実はアメリカのRSCの核店舗は百貨店にしろGMSにしろ総合業態からは1970 年に脱皮しており、スペ シャリティ百貨店としての道を歩み、その結果、限定された商品、限定された客層、限定されたグレード、 限定された高サービスを提供している。その結果、SCのデベロッパーは特定の分野に絞り込んだスペシャ リティ百貨店を数多く導入し、異なる性格の核店揃えにより、個々の核店舗はスペシャリティ、核店舗全体 でゼネラリティがSCの集客及び核店舗と専門店の相乗効果を発揮するために必要である。カルフール・ラ バルの核店揃えは正にスペシャリティ百貨店志向のメガストア9店舗によって形成されている。独自集客力 のあるメガストアは売場面積が3,000 u以上必要である(スペシャリティ百貨店化するには売場面積が 10,000 uは欲しい)。カルフール・ラバルは「あなたにとっての流行の中心地」をキャッチフレーズにして いるため、ファッション志向のメガストアが多い。すなわち、ラ・メゾン・サイモンズ(百貨店)、ラ・ベイ (百貨店)、レ・ゼル(百貨店)、シアーズ(GMS)、ザラ(アベレージ志向のファッション・メガストア)、 オールド・ネイビー(ポピュラー志向のファッションメガストア)の6つのファッション志向のメガストア が導入されている。中でも、ラ・メゾン・サイモンのビジュアルプレゼンテーションは見事であり、一見に 相当する。さらに、スポーツ・エクスペルッツ(スポーツのメガストア)、ロナ・ラントルポ(ハードウエア のメガストア)、ビューロー・アングロ(オフィス用品のメガストア)で核店揃えが形成されている。日本型 の総合業態が核店舗から脱皮の道を歩みつつあり、アメリカの核店舗は大型のスペシャリティ百貨店(売場 面積1万u〜1万5千u)を多核導入しており、さらに、カルフール・ラバルは一歩進み、中規模のライフ スタイルの提案型のメガストアを9店舗導入することにより核店揃えを行っている。日本の総合業態として の核店舗はもはや商圏形成力と専門店の成立力が希薄化しており、また、アメリカでも大型スペシャリティ 百貨店のパワーが特定の百貨店を除き低下している。カルフール・ラバルは、シアーズ(準総合業態)とロ ナ・ラントルポ(ホームセンター)とでSC全体の総合性を発揮しつつ、本来の流行の中心地を表現するフ ァッション志向の百貨店(3店)とファッション志向のメガストア(2店)を核店舗として導入している。 客にとってベイシックなニーズに対応しつつ、コンセプトに見合うニーズを強力に打ち出す3割差異化・特 化、7割総合化の勝ちパターン戦略を導入している。

(4)8の字のレーストラック型モール

 SCのモールは日本のように2核(総合業態2核、あるいは総合業態1核とサブ核2核の実質2核の両方) の場合は直線モール、アメリカのように多核の場合は十字モール(あるいは複数モール)が基準となる。S Cにおけるモールの真髄は、性格の異なる核店や各種の業態、さらには専門店を、「店舗の連続性」と「エン ターテインメント性のある空間」と「滞留性のある広場」と「アメニティ性のある通路」が四位一体となっ て全体を「なごませる」(異なる性格の客と空間を中和させる)機能を持つことである。カルフール・ラバル は、直線モールでもなく十字モールでもない、レーストラック型モールを採用している。レーストラック型 モールは別名サーキットモールと呼ばれ、客の回遊を循環型に一周すると同じ場所に帰るモールである。ア メリカではミルズ型のSCやモール・オブ・アメリカのレーストラック型モールが有名である。推定1,200 mのモールをレーストラック型に、かつ、8の字型にワンフロアで展開し、この8の字のレーストラック型 モールに9つの核店舗と280 店の専門店を配置し、さらに、屋内公園やフードコート、イベント広場やカフ ェを各所に設置し、回遊性と相乗効果さらには利便性の高いモールを形成している。正に、通常、中心市街 地を郊外でオープンエアモールで展開しているタウンセンターを、カルフール・ラバルは寒冷地でエンクロ ーズドモールで展開し、街並セッティングと散策ウォーク、ウインドショッピングを可能化している。また、 8の字型モールはモールの距離の確保と、モールのにぎわい演出性の確保、さらにはモールの利便性(一周 すると元の場所に戻る)の確保にとって有益である。

2.レーストラック型モールの考え方

 カルフール・ラバルは8の字のレーストラック型モールである。レーストラックモールの優位点は、一回 遊すると同じ場所に戻るという利便性と、同一敷地の中でより多くの専門店の間口となるモールの長さ(モ ール距離)を確保出来ることである。このように、8の字型のモール優位点は、バイパスが出来ることによ る利便性と、同じくモール距離がより多く確保出来ることである。このような利便性の確保とモール距離の 確保以外に、より本質的な優位点が8の字のレーストラック型モールにある。それは次の通りである。

 @客を楕円形に回遊させるためには「求心力」と「遠心力」のバランスを取った仕組みづくりが必要であ る。8の字のレーストラック型モールに核店舗を出来るだけ多く分散配置することによりモールに遠心 力をつけることが出来る。また、8の字にモールをクロスさせることや中央部分にマグネット機能(メ ガストア、イベント広場、カフェ、フードコート等)を配置することにより求心力がつくことになる。 モールに遠心力と求心力がつくとメビウスの輪のごとく自然かつ無意識に回遊が出来るようになる。カ ルフール・ラバルは見事にこの仕組みが出来ている。

 A客を楕円形に回遊させるためには「遊楽ウォーク」(時間消費型ウォーク)が出来るようにすることが必 要である。8の字のレーストラック型モールはバイパスの利用やダイレクトパーキングとレーストラッ ク型モールの一体化により時間節約型ウォーク(利便ウォーク)が可能になる。しかし、8の字のレー ストラック型モールの真髄は、モールの中に独自空間(閉鎖性のある異次元空間)が数多く設置するこ とが出来ることである。カルフール・ラバルは屋内公園やフードコート、各広場のイベント空間、カフ ェ、モールの迷路性による異次元空間…等の時間消費ウォークが形成されている。

 この求心力と遠心力のあるモール、そして時間消費の遊楽モールが、8の字のレーストラック型モールの 真髄である。

 アメリカで中心市街地の役割を持つタウンセンターが新立地で続々と開発されている。それらはモール型 のRSCのアンチテーゼ(反発)としてオープンエアモールの自然環境と一体化したSCである。カルフー ル・ラバルはモントリオール郊外でタウンセンターの役割を果たすSCではあるが、寒冷地という固有の特 性を考慮してエンクローズドモールのSCとして開発された。しかしながら、8の字のレーストラック型モ ールの導入により、寒冷地におけるタウンセンター街づくりの役割を見事果たしているSCである。
 
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