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安さと高品質の融合がエンターテインメントの


「イケア・シカゴ店」


 

 

1.イケア・シカゴ店の概要と特徴

 
スウェーデンのホームファニッシング会社のイケア・プロパティ・エスエルの日本支社であるイケア・ジャパン鰍ェ船橋(千葉県)と港北(神奈川県)と神戸(兵庫県)に出店表明している。日本市場においては、当面、首都圏と関西圏に8〜12店舗進出の予定である。イケアが、わが国に本格進出するにあたり、イケアの概要とアメリカで代表的な店であるイケア・シカゴ店を紹介する。

 イケアはスウェーデン生まれの、イングヴァー・カンプラッド(現在は名誉会長)によって1943年に創業された。イングヴァー・カンプラッドは、当時のスウェーデンでは、お金持ちは豪華な家具・見栄えの良い家具を使っていたが、低所得者は安っぽい家具・見栄えの悪い家具しか使うことができなかった。そこで、低所得者にも、豪華さは必要ないが、見栄えの良い家具を提供したいという高い志を持って会社を設立した。この高い志は、低所得者の家具・インテリアに関するライフスタイルを変え、成果のバロメーターである「世の中を変える!」までの影響を与えた。この概念はヨーロッパ全体に広がり、アメリカへ進出して当時の団塊世代(ベビーブーマ)のニューファミリー世代に大人気になった。

 イケアの概要及びイケア・シカゴ店(1998年に開業)の施設概要と特徴は次の通りである

<イケアの会社概要>
<イケア・シカゴ店の概要>
(1)スペシャリティ百貨店化したホームファニッシングストア

 1つの店が独自集客力を有する規模を売場面積で言うならば3,000u以上必要となる。イケアのストックホルム店の店舗面積は55,200uと、わが国の巨大百貨店並である。アメリカのイケアの店の面積は2万u〜3万uが一般的であるが、イケア・シカゴ店は店舗面積40,000uの全米1の規模を有している。一般的に店舗面積が1万u以上、取扱い分野が特定の業種あるいは特定の商品群に限定され、かつディスカウント志向でなくライフスタイル型メガストアの場合を、スペシャリティ百貨店と呼ぶ。アメリカの百貨店はファッション分野に特化しているためにスペシャリティ百貨店と言い、日本のヨドバシカメラは生活家電・情報家電に特化しているためにメディアの百貨店と言う(大阪・梅田のヨドバシカメラは3万uの店舗面積で1,000億円の販売をするスペシャリティ百貨店である)。総合百貨店や総合GMSは生活に関するすべての商品を取り扱いながら1万u〜5万uの店舗面積しか有していない。一方、スペシャリティ百貨店は、特定の分野の商品に限定しながら2万〜3万uの店舗面積を有し、特定の分野に限定したMDingを超満足で生活者に提供する業態は強力である。その現象が総合業態としての百貨店やGMSが苦戦し、スペシャリティ百貨店の業態が発展していることである。イケア・シカゴ店は、「家具・インテリア及びホームファッションが何でも揃百貨店」の位置づけにある。

 ホーム関連業態も、「住めれば良い空間」の生活維持レベル(第1段階)から、「快適な空間に住みたい」との生活の向上レベル(第2段階)へ、さらに、「自分の趣向に合わせた空間に住みたい」との生活の創造レベル(第3段階)へ進化する。アメリカの住生活の進化のレベルは、第3段階の自分の趣向に合わせた空間に住みたいとの生活創造レベルであるため、ホーム関連業態の成長と多様化が進んでいる。わが国は、快適な空間に住みたいの第2段階から、第3段階の自分の趣向に合わせた空間に住みたいとの第3段階への入口地点であり、今後の日本では住関連の多様化・個性化が進展することになる。住関連ニーズが多様化・個性化するとライフスタイルの提案型のメガストアであるスペシャリティ百貨店が成長する由縁である。

(2)地域固有の特性を世界に波及させたホームファニッシングストア

 イケアはスウェーデンの国及び生活に根ざした考え方をストアコンセプト及びMDingコンセプトに取り入れている。イケアのロゴに青と黄色が使われているのはスウェーデンの国旗の色である。イケアの創業者が生まれたスウェーデンの南部のスモーランド地方は土地がやせ細っているため、人々は勤勉に働き、わずかな貯えで暮らし、限られた資源をどれだけ有効に使われるかを常に考えていた。イケアの価格政策である価格を低く設定するというイケアの精神はここから生まれている。しかし、価格のために品質を妥協するわけでなく、さわやかで健康的なライフスタイルセンターを創出している。このようなイケアのコンセプトは、スウェーデン及びスウェーデンの一地方の生活の考え方の特色を、知識化(情報+経験)→理論化(ノウハウの組立)→戦略化(成果)→戦術化(能率)して創出している。イケアは正に、スウェーデンの一地方の地域固有の特性を活用して、それをビジネスモデル化して世界に通じる商品に成長させている。イケアの創業者が低所得者にも見栄えのよい家具・インテリアを使ってもらえるように、価格的には安いが、デザイン性に優れ感性の高い商品を製造・販売して成功したノウハウは、アメリカへイケアが進出した時に、ベビーブーマーに大人気になった。当時のベビーブーマーは感性は高いが所得の低いヤングファミリー世代であった。結婚して家庭を持ち子育ての中で、デザイン性に優れ、価格的に安いイケアの家具・インテリアは正にベビーブーマーにうってつけの商品であった。スウェーデンの一地方の生活スタイルが、ヨーロッパ全土、さらにはアメリカへと波及した出来事は、流通理論で言う地域固有の特性の活用である。正に、イケアの創業者は低所得者の住空間をイメージ刷新するという世の中を変えることに成功した。

(3)相反する購入動機を融合させたホームファニッシングストア

 イケアの家具・インテリアは商品価格を低く設定し、高いお金を支払うことなくデザイン性と機能の高い商品を手に入れることができる喜びを提供している。一般的には、デザイン性が高く高品質の商品は価格が高く、逆に、価格の安い商品はデザイン性が低く低品質の商品である。ところが、イケアは低コストでできる原材料・工場システム、また、低コストで実現できるデザインを常に考えたシステムを持っている。同時に、家具を選び、棚から取り、自分で家まで運び、自分で組み立てるシステムにより安さを追求している。一方で、見栄えのよいデザインと高い感性を持つ商品を開発しており、いい商品を安く提供するビジネスモデルを確立している。イケアは、このような「安さと高品質(デザイン性+感性)の相反する購入動機を融合」した商法を具体化することで人気を博している。1980年代のアメリカ、1990年代の日本は安さが一番の考え方は通用した。ところが、アメリカの1990年代、日本の2000年から、単に安さを追求する安さ一番の商品や企業は生活者の支持を得られなくなった。しかし安さが必要なくなったのではなく、安さは定番化(あたりまえ)になり、安さ以外の何かが一番であり、次いで2番目に安いという評価の企業・商品が成長する時代になっている。イケアは、安さの訴求力は十分あるが、安さ以外のデザイン性、感性の高さ、プレゼンテーションの見事さが一番であり、かつ安いとのイメージを構築しており、正に安さ2番の原則を実現させている。

(4)SCタイプのホームファニッシングストア

 通常のイケアの売場は家具・インテリア及びホームファッションをショールーム型売場で一方通行のモールにより結ぶ方式である。しかしながら、イケア・シカゴ店は通常のイケアとは異なりSCタイプのホームファニシングストアの店づくりを行っている。その内容は次の3つである。

 @建物が三層の八角アトリウム構造であり、4万uの店舗面積の広大さを打ち消している。中央に吹き抜けを取り、八角形に売場を配置展開している。SCのアトリウムによるバーティカルモールの考え方を導入している。

 Aショールーム方式のルームセッティングした売場を110ヶ所設定し、あたかもSCの専門店(テナント)のように独自性のある売場の連続性をモールで結んでいる。各売場は生活の利用シーンに基づき構築され、SCの専門店の店舗配列を家具・インテリア・ホームファッションの特定の分野で確立させている。正に、ホームファニッシングの百貨店をSCという勝ちパターン業態のノウハウを導入している。

 B付帯施設として,IKEAレストラン,IKEAカフェ,IKEAフードマート(フードコート)の多様な飲食店を導入し、かつ、託児場も用意し、単なる物を売る場ではなく、店で半日間過ごしてもらう仕組みをつくっている。物販以外に付帯施設を導入し、時間消費型の施設の考え方はSCの考え方と同一である。 このようにイケア・シカゴ店は、従来のイケアの店とは異なりSCの概念を取り入れており、SC化されたホムファニッシングストアと言うことが出来る。

(5)生活の臨場感のあるプレゼンテーションのホームファニシングストア

 イケアの売場のビジュアルプレゼンテーションの最大の特色は、売場に生活の臨場感があることである。イケアは実際の使用者の立場に立ったコーディネイトのプレゼンテーションを行っている。イケア・シカゴ店では、110のルームセッティングした売場で形成され「いごこち感と使い勝手感」のある生活提案をしている。多くの生活提案型のプレゼンテーションは、あこがれ感のある生活提案(ライフクリエーション=こんな生活があったのか.=百貨店型の生活提案)が多い中で、生活感のある生活提案(ライフソリューション=こんなことをして欲しかった.)の「日常生活の中での新しさ」のプレゼンテーションで売場の演出を行っている。生活のライブ感(生活実感)のあるルームセッティングの売場が110ヶ所存在することは、生活者にとって選びやすいホームファニッシングストアである。

2.イケア・シカゴ店のエンターテインメント性の要素

 イケア・シカゴ店は単なる家具・インテリア・ホームファッションの店ではなく、多くのエンターテインメン性を持ったホームファニッシングストアである。

(1)SC化したホームファニッシングがエンターテインメント

 一般の家具・インテリア・ホームファッションの店は購買頻度が低く、大額商品であるため、静の売場(さみしい売場)が一般的である。イケア・シカゴ店は、よりカジュアル化、より多様化、より専門化、より複合化して、客の来街動機の幅を広げ、日常の中のエンターテインメント性を付加して、動の売場(にぎわいのある売場)を形成している。これはホームファニシングストアを基軸としつつ、多くの付帯施設を付け加えることによりSC化している結果である。住関連ニーズは女性だけでなく男性にとっても楽しい・うれしい売場である。家族揃って・夫婦揃っての来街動機を満足させるためにはSCの客の来店動機の幅の広さの概念を導入したホームファニッシングストアが最適である。

(2)110の生活の臨場感のあるルームセッティングの売場がエンターテインメント

 イケアの売場演出は、単品・機能売場ではなく、コーディネイト・機能売場を用いているところに特徴がある。生活提案といえば、あこがれ型・高級志向の百貨店型のパターンが多いが、イケアの生活提案は、日常生活の中での新(半歩先を行く手法)を追求しており、実際の購入目的者にとって生活のライブ感(実感)のある売場をモデルルームとしてセッティングしている。それゆえに、実際の日常生活の場が、臨場感を持って選べるという特色を持っている。自分の部屋を頭に入れ、自分の現実性の中で半歩先を行く臨場感のあるルームセッティングの売場を見ることにより、自分の部屋のあり方が現実の生活の中で見いだすことが出来る。その意味において、生活の臨場感のあるコーディネイト販売は必然的に機能性が伴うことが絶対条件となる。イケアは、このようなルームセッティングした売場が110ヶ所用意してあり、これが生活者にエンターテインメント性を提供している。

(3)廉価性とデザイン性と機能性の融合がエンターテインメント

 イケアは廉価性を重視しつつ、デザイン性と機能性を展開し相反する手法を同時に融合させている。所得的には制限があるが、感性の高いヤング及び平成ニューファミリーにとって、うれしいというエンターテインメント性を提供している。確かに年配者にとっては、ちゃちな感じがするがヤングファミリーにとっては評価が高い。家具・インテリア業界も今後は急速に高級志向とロープライス・ハイイメージ志向の二極化が進むことになる。

 イケアの日本進出が来春にも実現する。イケアの日本進出にあたりコンセプト及び売場展開には問題はない。しかし、住関連商品は日本とアメリカ・ヨーロッパの住空間には相違点があり、これを解決した商品の日本バーション化が間違いなければ楽しみな業態である。
 
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