本サイトを快適にご覧いただくためには、「文字サイズ 小」 にてご覧いただくことをご推奨いたします





デジタルとアナログのミスマッチがエンターテインメントの


「ザ・グローブ・アット・ファーマーズマーケット」



 

1.ザ・グローブ・アット・ファーマーズマーケットの概要と特徴

 
ロサンゼルス市で昔から農家の直営の店として親しまれ、また観光地としても有名であったファーマーズマーケットの隣接地にライフスタイルセンター志向で街並み型のRSCである「ザ・グローブ・アット・ファーマーズマーケット」(以下ザ・グローブ)が2002年3月にオープンしている。今、アメリカのSC業界は従来のSCの王道を歩むエングローズドモール型のRSCの開発が年間2〜3ヶ所程度であり、オープンエアモールのRSC及びライフスタイルセンターの開発が主流になりつつある。ザ・グローブもオープンエアモールの街並みセッティングを持つライフスタイルRSC(ライフスタイルセンターの要因を持ったRSC)である。ザ・グローブは住民の開発阻止に合い、15年間手つかずであったプロジェクトを、新たに参入した開発者であるカルーソ社が1年で住民と折衝を終え、プロジェクトをスタートさせた。新しく開発されたザ・グローブとロサンゼルス市の観光名所であったファーマーズマーケットが一体化し、新しいタイプのSCとして人気を呼んでいる。

 ザ・グローブの施設概要は次の通りである。
(1)ライフスタイルRSC

 ライフスタイルセンターはアメリカで一番注目されているSC業態である。ライフスタイルセンターの要因の中に街づくりコンセプトがある。街づくりとは、1つはオープンエアモールであり、2つは多目的な複合街区であり、3つはそぞろ歩きができる散策型ストリートの機能を持つことが必要である。

 ザ・グローブはオープンエアで建物・広場・通路が街並みセッティングされ、さらにかつてロサンゼルスを走っていた市電を復活させ、シャトルとして利用している。中央の広場は音楽と一体化した噴水と50年を経過した木をシンボルとしてザ・グローブの賑わいと憩いの中心を形成している。ザ・グローブはノードストロームを核店とし、有力・有名専門店街さらにはシネマコンプレックス等のエンターテインメント施設を充実させ、中央には路面電車を走らせ、オープンエアモールのストリート街区に個性ある専門店のファサードで景観を演出している。アメリカでも日本でもオープンエアモールとエンクローズドモールの比較論がなされるが、寒い・暑い・雨・風…等の季節の次元で論じるならばエンクローズドモールに勝る快適性はなく、結論は明確である。しかし、自然との一体化による人間性の感情や地球にやさしい等の別次元からのオープンエアモールのSCの開発が論じ始められている。現実論からのオープンエアモールの導入の要因は、1つはエンクローズドモールのSCに対するアンチテーゼ(いらないというのではなく、これ以上はいらない)が生活者側から起こっており、オープンエアモールの新規開発のSCが既存SCとの差別化戦略の1つと成り得るからである。

 2つは、エンクローズドモールのSCとオープンエアモールのSCとの売場効率が必ずしもエンクローズドモールに優位に働いていないことである。オープンエアモールの建築費はエンクローズドモールの6〜7掛けであり、空調費は著しく安くなる(その代わり、オープンエアモールのランドスケープ費は多くなるが…)。当然、賃料及び共益費負担が低くなるため、売場効率が同一であればオープンエアモールのSCでも良いことになる。 いずれにしても、ザ・グローブはノードストロームを核店とし、80店のテナント(ファーマーズマーケット含まず)で形成されるRSCである。

(2)デジタル志向のRSCとアナログ志向のファーマーズマーケットが融合したSC

 世界大恐慌(1929年)の時に、周辺の農家が直営販売システムとして開発されたファーマーズマーケットが近年は観光化し集客力を持つようになっていた。その隣接地(敷地的に一体化)に、ザ・グローブがライフスタイルセンターの良さを取り入れたRSCとして開発され、今や、サンタモニカプレイス&サードストリートプロムナードに匹敵する街区になった。ザ・グローブが持つライフスタイルRSCと、ファーマーズマーケットが持つ自然発生的・産直かつ対面販売・親しみ性のある商店街が一体化し、ザ・グローブアットファーマーズマーケットとしての融合業態が結果的に出来上がり、強力なレジャリー・リゾートゾーンが形成された。このようなデジタル志向のザ・グローブとアナログ志向のファーマーズマーケットのミスマッチな融合はRSCに対するアンチテーゼと商店街に対するノスタルジアによって逆に人気を博している。

 参考までに、アメリカの街づくり型SCを街区の機能の面から見た事例を示すと次の通りである。
(3)レジャリー・リゾートの生活シーンに対応したSC

 家庭や職場以外の生活空間を「第3の空間」(サードプレイス)と呼ぶが、第3の空間を生活シーンと関連で商業の面から見ると次の通りとなる。


ザ・グローブはライフスタイルRSCである。一般にライフスタイルセンターは地域密着性が高く、ネイバー・コンビニエンスの生活シーンかコミュニティ・オアシスの生活シーンに適合した業態である。しかし、ザ・グローブはレジャリー・リゾートの生活シーンであり遊びを基軸動機とした出向パターンである。すなわち、ザ・グローブゾーンはRSCではあるが、RSCよりはるかにアメニティとエンターテインメント性の高い時間消費型SCである。同時に、ファーマーズマーケットも1930年代のオープン当時は生活必需商品の売場であったが、その後アナログ型の市場として観光化し、ザ・グローブゾーンと同じレジャリー・リゾートの生活シーンに対応している。その意味においてザ・グローブゾーンとファーマーズマーケットは全く異なる業種・業態であるが、客から見た出向動機に共通性があり、相乗効果が発揮できるのである。正に、RSCが持つデジタル志向の魅力とファーマーズマーケットが持つアナログ志向の魅力が互いに良さを発揮し、異業態の強者連合が結果的ではあるが、出来上がっている。今や、ザ・グローブは、カルフォルニアbP集客を誇るサンタモニカプレイス&サードストリートプロムナードを脅す存在になっている。

(4)ノードストロームを核店とし、ナショナルテナントと地元テナントがミックスしたSC


 今、アメリカで一番元気がいい百貨店はノードストロームである。ザ・グローブはノードストロームのみの一核型RSCである。ライフスタイルセンターであり、エンターテインメントでもあるザ・グローブは、ファーマーズマーケットを含め、あらゆる核要素を具備しているため、核店舗としては一番人気の高いノードストローム百貨店を一店のみ導入しているにすぎない。ノードストロームは団塊世代御用達の百貨店として過去には高い成長を示し、ここ数年業績は低迷していたが、手の届く贅沢さというポジショニングで、最近急速に業績を回復し、現在は絶好調である。その再成長のポイントは次の通りである。

 @アホーダブル・ラグジュアリー戦略

 ノードストロームは手の届く範囲内の贅沢さであるラグジュアリーさと手頃な価格であるアホーダブル性が支持されている。ニーマンマーカスやサックスフィクスアベニュー(アッパーグレード百貨店)とメイ百貨店やメイシーズ百貨店(ミドルグレード百貨店)の中間に位置し、MDingのコンセプトである「トラッド」(メンズ)とエレガンス(レディス)」で売場をまとめ、かつ「卓越した顧客サービス」で展開し、百貨店業界の中で独自の分野を確立している。

  A3割差異化・特化・7割ゼネラリティの戦略

 ノードストロームは靴屋出身の百貨店であるため靴売場は圧倒的強さを持っている。靴の売上高は1,357億円、売上の20%弱を占めている。これだけの靴の売上を持つ百貨店は他にはない。他の百貨店と比較してノードストロームは靴が差異化要因であり、靴で概念的に3割差異化し、差異化した以上は特化し、残りは他の百貨店と同じでよい…との3割差異化・特化・7割ゼネラリティの戦略を取っている。ノードストロームは見事、靴売場の差異化・特化で客に3割の異質性があることをイメージづけている。

 B客層の概念絞り込み客層オール対応戦略

 ノードストロームは他の百貨店よりも幅広い客層を持っている。エイジで見ると「ノードストロームは25〜64才」、「ニューマンマーカスは43〜64才」、「サックスフィクスアベニューは35〜55才」であり、ノードストロームは他の百貨店よりも若い客層を、また他の百貨店よりも熟年者を対象にし、いわゆるピンキリ商法を導入している。ターゲットの幅が広いと誰にも対応できるために有利であるが、特色がなくなり結果的には売れない店となる。ノードストロームは、30〜40代を概念的に基軸ターゲットとし、そして25〜64才までの客に買うものがある売場づくりをしている。正に、概念絞り込み(30〜40才台)客層オール対応(25〜64才)の勝ちパターンの戦略を導入している。

 このような人気のあるノードストロームを核店にアバンクロンビ&フィッチ、アンソロポロジー、バナナリパブリック、ギャップ、ビクトリアシークレット、チコーズ、トミーバハマ、クレート&バレル、ポタリーバーン、バーンズ&ノーブル…等のナショナルチェーンが数多く出店し、同時に、地元テナントも導入し、バランスの取れたテナントミックスを行っている。


2.ザ・グローブ・アット・ファーマーズマーケット
                         エンターテインメント性の要素


 ザ・グローブは「ザ・グローブのハイテク型のRSCとファーマーズマーケットのアナログ型の市場」がミスマッチ風に複合した業態がエンターテインメントである。

(1)ミスマッチ業態ミックスがエンターテインメント

 ファーマーズマーケットの市場風商業施設とザ・グローブの今風の有名テナントのミスマッチの融合が、従来型エンクローズドモールへのアンチテーゼと、市場スタイルへのノスタルジアがうまくかみ合って現代の生活者にエンターテインメント性を与えている。

(2)ライフスタイルセンターの良さの取り込みがエンターテインメント

 ザ・グローブは全体的にオープンエアモールであり、中庭に噴水やミニ公園を用意し、ストリート街区に個性ある専門店を配置し、中央には昔ロサンゼルスで利用されていた路面電車を走らせRSCであるがライフスタイルセンターの要素を十分備えている。RSCにエンターテインメント性を付加して、より楽しくし、ライフスタイルセンター性を付加して、より快適にしたのがザ・グローブであり、人気の秘訣でもある。

 ザ・グローブは、住民が自慢し、誇りに想うデベロッパーであるカルーソ社が手掛けた3つ目のSCである。生活者の視点からSCの開発のデベロッパーは数多くあるが、住民(住んでいる人)の視点からSC開発はカルーソ社が先駆者である。その意味において、ザ・グローブは次世代型SCと言うことができる。
 
Copyright (C)2007 Dynamic Marketing Co.,Ltd. All rights reserved.