本サイトを快適にご覧いただくためには、「文字サイズ 小」 にてご覧いただくことをご推奨いたします





もうひとつ欲しいSCがエンターテインメントの


「ファッション・アイランド」

 

 

 

1.ファッション・アイランドの概要

 「ファッション・アイランド」が5年間に1億ドルを費やしてリニューアルを行いライフスタイルRSC(ライフスタイルセンターの良さを取り入れたRSC)として再出発し健闘している。

 ファッション・アイランドは、アメリカ最強のSCであるサウス・コースト・プラザまで車で15分の直下型立地に位置している。しかしながら、サウス・コースト・プラザとは異質性をもったSCとして、客はサウス・コースト・プラザがありながら、「もう一つ欲しいSC」との位置づけでファッション・アイランドを認知している。このようにサウス・コースト・プラザが立地していても、客の選択肢として、もう一つ性格の異なるSCが欲しいを演じているのがファッション・アイランドであり、今回事例で取り上げた理由である。ファッション・アイランドの至近距離にあるサウス・コースト・プラザはアメリカ最強のSCでありリース面積19万u・売上高1,000億円・テナント数270店・パーキング台数13,975台、かつ売場効率は通常のSCの2倍を誇っている。それゆえに、周辺のSCは、エンターテインメント型SC(ザブロックアットオレンジ、アーバインスペクトラム)やパワーセンター(タステンマーケットプレイス、アナハイムセンター)の異業態のSCが成立し、サウス・コースト・プラザのような核店と専門店が相乗効果を発揮するRSCは草木も生えないエリアであった。ファッション・アイランドも例にもれず、1967年にオープンしたものの長い間苦戦し、途中、JCペニーやバッファム百貨店が退店している。しかし強力なアトリューム・コート(フードコート)やオープンモールの良さを活かし地中海風のデザインを導入し、また、新たに60店舗分の小売りスペースを創出し、界隈性・にぎわい性を生みだし、ライフスタイルセンターの要因を付加することにより、サウス・コースト・プラザには真似のできない異質性を武器に、見事復活している。また、ファッション・アイランドは、新興住宅地であるニューポート・ビーチ市のダウンタウンとして位置づけられており、市の中心市街地としての顔を持ったSCである。地域住民は2つの性格の異なる2つのSCを選択肢として持ちたいとの「もう一つのSCの成立理論」を実証しているSCである。

 ファッション・アイランドの施設概要と特徴は次の通りである。
(1)ライフスタイルRSC

 ファッション・アイランドは、基本型としてはRSCである。核店はニーマンマーカス(上グレード百貨店)、ブルーミングデールズ(中上グレード百貨店)、メーシーズ(中中グレード百貨店)、ロビンソンメイ(中中グレード百貨店)の4つの百貨店であり、専門店・飲食店テナントが174店、さらにシネマコンプレックス等のアミューズメントによって構成されており、SCの業態としてはRSCである。ところが、至近距離に圧勝型RSCであるサウス・コースト・プラザ(リース面積は1.7倍=ランチェスター理論による競争相手に圧勝する規模であり、かつプライスゾーンはピンキリ商法)が立地しているために、ファッション・アイランドのRSCとしての業態パワーを発揮することは困難であった。周辺の多くのSCが業態変更やエンターテインメントセンター・パワーセンターへと差異化した中で、ファッション・アイランドはニューポート・ビーチ市のダウンタウンとして位置づけにあることから、RSCとしての業態は維持しながら、ライフスタイルセンターの要因を付加することによりサウス・コースト・プラザとは異質性を持ったライフスタイルRSCの道を歩んだ。すなわち、当初からオープンモールであったが、オープンモールが勝ちパターン化していなかったために、地中海風のデザインを導入し、木・花・草を見事に演出し中庭風・公園風の商環境演出、また、水を使ったアメニティを付加し、オープンモールを勝ちパターン化した。このように、オープンモールの勝ちパターン化によりダウンタウン(中心市街地)の位置づけが明確になり、SC全体が街づくり型SCに変化した。正に、ファッション・アイランドは、ライフスタイルRSCと呼ぶにふさわしいSCである。

(2)もう一つあって欲しいSC

 客は欲深く、どんなにすばらしいSCがあっても、定番化(必要ではあるが、あたりまえになる)し、もう一つの選択肢を求める。これを「もう一つのSC成立理論」(寡占はイヤだ、もう一つの選択肢が欲しい)や「SCの2.5の成立実践理論」(一つのマーケットの中に2つのSCとニッチではあるが独自性のある0.5のSCが欲しい)と呼ぶ。ファッション・アイランドは正に、最強のSCであるサウス・コースト・プラザに対するもう一つの選択肢としてのSCであり、基本的にRSC業態として7割は同質化(RSCの部分)しているが、ライフスタイルセンターの要因を付加することにより3割は異質化(ライフスタイルセンターの部分)している。客は3割異質化し、かつその分野で特化(競争SCとはあきらかに異なる)すれば、2つのSCは客から見て7割異なるSCとして認知してもらえることになる。アメリカでは4.6万ヶ所にSCが立地しており、競争の激化は自然と得意分野(競争優位性と異質性の両方を持った領域)を武器とする棲み分け流通社会となる。今後、わが国の流通業界のみならず経済業界においても、各分野で2.5の原則(2つの大手と0.5の小手)が成立する社会になる。客は選択肢として2つの対象を望む。また同時にニーズは少ないがニッチを対象とする個性ある対象も必要とする。ファッション・アイランドは、サウス・コースト・プラザがあるがゆえに逆に成立する「もう一つのSC」へと進んでいる。このもう一つのSCづくりの切り口がライフスタイルセンター化である。

(3)理想的なオープンモールのSC

 何と言ってもファッション・アイランドの位置するロサンゼルスの気候はオープンモールにとって最適な条件下にある。オープンモールの是非は別にして自然と一体化という意味においては自然志向の快適性の高さはエンクローズドモールよりもオープンモールの方が勝っている。一般的に生活シーンと商環境のマトリックスは下表の通りである。

<生活シーンとSCの商環境マトリックス>
 生活シーンは、「ネイバー・コンビニエンスシーン」(生活の基礎ニーズに対応した生活シーン)と「コミュニティ・オアシスシーン(月に10回程度の出向ニーズ)」(日常生活の中で生活提案ニーズに対応した生活シーン)と「タウン・リゾートシーン(月に1〜2回の出向ニーズ)」(非日常の街へ出かけるハレのニーズに対応した生活シーン)と「レジャー・リゾートシーン(年に2〜4回の出向ニーズ)」(観光やレジャーニーズに対応した生活シーン)に区分される。

サウス・コースト・プラザとファッション・アイランドの生活シーン軸は同じ「タウン・リゾートシーン」であるが、生活シーン軸とデザイン軸は、サウス・コースト・プラザが「コンテンポラリー(今日志向)」に対し、ファッション・アイランドは「モダン(近代志向)」である。生活シーン軸と商業空間軸は、サウス・コースト・プラザが「人工志向」に対し、ファッション・アイランドは「人工・自然融合志向」である。生活シーンとモールの回遊軸は、サウス・コースト・プラザが「ストリートモール志向」(ギャレリアモールのようにモール自体にエンターテインメント性は少ない)に対し、ファッション・アイランドは「街並み志向」であり、バザール型の街区内での回遊導線である。生活シーン軸とモールの性格軸は、サウス・コースト・プラザが「エンクローズドモール志向」に対してファッション・アイランドは、「オープンモール志向」である。このように、ファッション・アイランドはサウス・コースト・プラザとの商環境面での異質化・特化をすることにより、物販専門店・飲食店への集客の波及効果を高めている。その意味においてファッション・アイランドは勝ちパターン化したオープンモールでありテナントへの波及効果から見ても理想的なオープンモールと言うことができる。

(4)リニューアルによるイメージ一新のSC

 ファッション・アイランドは長期間、サウス・コースト・プラザとの競争において十分なる成果を上げることができなかった。核店としてのJCペニーやバッファム百貨店が退店した後、3回のリニューアルを行うことによって、サウス・コースト・プラザに対するもう一つのSC異質型の位置づけを確立した。

 @第1期(1985年)にJCペニーの退店跡にアトリューム・コートを設置し、名物性のあるフードコートを構築した。

 A第2期(1989年)にオープンモールゾーンを地中海風のデザインを導入し、その後も順次強化し、見事な自然とデザインの融合した中庭風オープンモールが完成した。従来の勝ちパターン化していなかったオープンモールを新しいデザインと商環境づくりで見事勝ちパターンのオープンモールに再構築した。

 B第3期(2003年)に、60店舗分の小売りスペースを創出して商環境と新規テナントの導入により著しく界隈性を高めた。

 このように、アトリューム・コートや地中海風のデザインによる環境演出や新規テナントの導入の3つのステップにより、ファッション・アイランドはイメージが一新され、にぎわいのあるSCに変化した。勝ちパターンづくりと一体化したリーシングでないとお願い型リーシングとなり効果がでないことを証明している。

2.ファッション・アイランドのエンターテインメント性の要素

 ファッション・アイランドはサウス・コースト・プラザに対するもう一つの異質型SCである。このサウス・コースト・プラザに対する異質化こそが、ファッション・アイランドのエンターテインメント要素である。

(1)住民のオアシスとなるSC

 ファッション・アイランドは、ニューポート・ビーチ市のダウンタウン(中心市街地)に位置づけにあり、住民が集い憩う場でもある。快適な商環境の中で人々が集い憩う場はサウス・コースト・プラザには真似ができない。サウス・コースト・プラザはMDing的にはすばらしいSCであり生活の提案性やラグジュアリーブランドのテナントミックスは強力である。その意味においては生活者(ライフクリエーター)としてのニーズに対応している。しかし、集い憩う住民のオアシスとしての場は希薄である。しかし、ファッション・アイランドは買物という意味においてはサウス・コースト・プラザに見劣りするが、住民のオアシス機能は強力であり、サウス・コースト・プラザに真似できないまでに特化している。

(2)飲食店の強さが発揮されているSC

 ファッション・アイランドのアトリューム・コート(グルメ型フードコート)は名物化され人気がある。また、外部空間の快適性と一体化したレストラン街も強力である。一方、サウス・コースト・プラザはフードコートがなく、飲食店は必ずしも強力ではない。その意味において飲食機能は快適環境との一体化によりサウス・コースト・プラザを上回っている。特に、環境・デザイン性と一体化したカジュアルなレストラン機能の強さはファッション・アイランドの強みである。

(3)ヤングマインド志向のテナントミックスのSC

 ファッション・アイランドはSC全体のMDingにおいてはサウス・コースト・プラザと比較して見劣りする。サウス・コースト・プラザはシアーズローバックの中下グレードのプロモーショナル百貨店からノードストローム(中上グレード百貨店)やサックス・フィフス・アベニュー(上級百貨店)までの7つの核店を武器に、専門店はポピュラー志向専門店からラグジュアリ志向専門店までピンキリ商法を導入し最強である。それに対してファッション・アイランドはニューポート・ビーチ市の住民に適合することとサウス・コースト・プラザとの差異化のためヤングマインド志向及びカジュアル志向のライフスタイル提案型の店を数多く導入している。 このように、ファッション・アイランドは、商環境面・飲食強化・ヤングマインドのMDing等により、サウス・コースト・プラザとの差異化を行い、この点が生活者及び住民にとってもエンターテインメントとなっている。

 ファッション・アイランドは、今後のわが国の流通飽和期(2006年〜2015年までの大競争時代)における強敵SCとの棲み分け手法の例として最適である。棲み分けの分野や要素はそれぞれのSCによって異なるが、どんな強いSCであっても必ず定番化し、客はあたりまえと感じるようになり、新しいもう一つのSCを選択肢として欲しがるようになる。アメリカ最強のSCと棲み分けしているファッション・アイランドの健闘は強敵SCとの棲み分けという意味において参考になる。
 
Copyright (C)2007 Dynamic Marketing Co.,Ltd. All rights reserved.