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住民が自慢することがエンターテインメントの


「コモンズ・アット・カラバサスパーク」



 

1.コモンズ・アット・カラバサスパークの概要と特徴

 コモンズ・アット・カラバサスパーク(以下、カラバサスパーク)は、1998年11月にカルフォルニア州のロサンゼルス郊外のカラバサス市にライフスタイルセンターとしてオープンした。今、アメリカではライフスタイルセンターがRSCのアンチテーゼ(反発)と商店街へのノスタルジア(郷愁)として積極的に開発されている。

 筆者は、「SCは20世紀の最強の業態」であるに対して「ライフスタイルセンターは21世紀の最適業態」と呼んでいる。20世紀は重厚長大の工業社会・大量生産大量消費社会・合理性と効率至上主義の社会の中で流通業界の最強の業態として君臨してきたのがSCである。またSCはデベロッパーによる強者連合システムであるためアメリカの小売業の50%強、わが国の現状で20%、近未来には35%のシェアをSCの売上高が占めようとしている。一方、ライフスタイルセンターは「商店街の良さを取り入れたSC」と意味訳され、「自然環境・建築デザイン・体験環境と融合したSC」(居住者の第3の空間理論としてのSC)、「人的ふれあいのある地域密着性と融合したSC」(コミュニティ社会のプラットホームとしてのSC)「生活提案と融合したSC」(脱買物学習経験の終焉理論としてのSC)、「街づくりと融合したSC」(メインストリート理論としてのSC)の機能を持っている。このような従来のSC理論とは異なった概念ゆえにライフスタイルセンターは最強ではなく21世紀の最適業態として位置づけられる。正に21世紀は20世紀が残した地球的課題の反省の上に成り立っており、その意味においてライフスタイルセンターは21世紀の最適業態なのである。カラバサスパークはこのような概念を持つライフスタイルセンターの代表的事例であり、また、住民が自慢し・誇りに想い、住めば都を感じるSCである。

 この住民が自慢するSCとして住民が高い評価をしているが今回事例として取り上げた理由である。 カラバサスパークの施設概要と特徴は次の通りである。
(1)地域密着型ライフスタイルセンター

 アメリカの業態論から見るとNSCのアッパー型であり、CSCの変形型であるが、本質的には地域密着ライフスタイルセンターと呼ぶ方が適切である。地域密着ライフスタイルセンターとしてのカラバサスパークの特徴は次の通りである。

 @地域密着型のニーズ対応型構造であるが、NSCのように最寄テナントのみの集合体ではなく、ライフスタイル提案性の高いテナントが導入されている。

 A核店はスーパーマーケット(テルフス)やドラックストア(ライドエイド)やキッズ&玩具(ジンボリー)やシネコン(エドワードシネマ)を導入している。

 B物販以外に外食やエンターテインメント、さらにはサービス施設等のコミュニティ施設が導入されている。

 C食品の大量店をマグネットストアとしているが、GMSや百貨店のようなゼネラリティ業態は導入していない。

 Dセンター全体はスペシャリティセンターの性格を持ったSCである。

 E商圏は比較的小商圏であり、車で5〜10分圏を対象としている。ただし、商圏内の住民の所得は比較的高く、平均8万ドル(全米平均の2倍)のハイレベルエリアである。

 カラバサスパークは、地域密着型ライフスタイルセンターとして典型的なSCである。特に、ビレッジ型SCのスーパーセンターとの対抗業態として注目されている。

(2)住民が自慢するSC

 SCは対象者である商圏内居住者の概念が経済や生活の高次元化に伴い変化してきた。その変化と内容は次の通りである。
 SCは経済や生活の進展が低いレベルでは「消費者」(生活のために消費をする人)であったが、経済や生活の進展が高まると「生活者」(創造的生活をする人)を対象としている。今は正にSCは生活者を対象としているのである。ところが、物を売るために最高のレベルに進化したSCに対してアンチテーゼが起こり、また、今は淘汰された住民のコミュニティの場であった商店街へのノスタルジアが起こり、生活者のみの視点ではなく住民の視点、すなわち、「住めば都の感覚で住んでいる人」に対する地域共同体(コミュニティ)の概念がSCを繁盛させるために必要となってきた。商圏内生活者は単に買物センター化したSCだけでなく、元々、消滅した商店街が持っていた地域の生活のシンボルゾーンであり、オアシスとなる場を望んでおり、住む人にとっての視点からのSCづくりが必要となっている。住民としての視点からのSCとは、一つは、地域のコミュニティとして買物のみならず住民のオアシスとなるSCであり、もう一つは、建物がデザイン的・環境イメージ的に地域に溶け込み地域のイメージを高めるSCである。

 カラバサスパークは、住民の買物や生活に関するニーズやウオンツを聞き、住民の声をSCの開発に反映させたSCであり、住民の評価が高い。住民は自らの意識が取り入れられSC開発への参画意見があり、一般のNSCとは異なるライフスタイルの提案性やデザイン性の高いイメージは住民が自慢するSCとなっている。

(3)カルーソ社の開発スタンスのSC

 カラバサスパークのデベロッパーは「カルーソ・プロパティ・マネジメント社(以下、カルーソ社)である。カルーソ社は、住宅地の中で住民の反対で開発が止まっている物件を低価格で買収し、新たな発想に基づいてSC開発を可能としているデベロッパーである。アメリカはコミュニティを大切にする社会であり住民は住環境を阻害される商業施設は住宅地の中には開発して欲しくないとの考え方を持っている。特に、ウォルマートやNSCのようなローコスト・ウエアハウス型の商業施設が住宅地の中に進出すると地価が下落するために反対し、SC開発ができない。カルーソ社はSC開発にあたり、住民から高質で豊かな住環境を破壊するものとして反対運動が起こった物件に、デベロッパーとして、住民と何度も対話を重ね、住民が好意を持って受け入れられるSCの内容を模索した。住民は単なる生活利便性の集積だけでなく、文化性やエンターテインメント性の高いテナントの導入など、テナントミックスにおいても住民の意見を取り入れた。また、空間演出においても、細やかな注文が住民からつけられ、デザインコンセプトは「古い15世紀のイタリアの村」とし、時計台や屋根構成に変化を持たせ街並みを作り出している。また、人工湖や子供の遊び場を設け、コミュニティ意識の場づくりが施されている。このような手法でカルーソ社は住民の望むSCを開発することにより、住民の理解と賛同を得たSCづくりを行っている。カルーソ社が開発するSCは、ウォルマートやビレッジ型NSC、さらにはRSCが開発できない住宅地の中に理解と賛同を得て進出し、独占マーケットにより高い売場効率を確保している。いわばアメリカの環境規則のゾーニング法による規則社会の中でSCを開発するノウハウを確立している。同じ手法で、「プロムナード・アット・ウエストレイク」や「ザ・グローブ・アット・ファーマーズマーケット」を開発している。このように環境規制の中で住民の理解と賛同を得る開発手法を「カルーソ社スタンスのSC開発」と呼んでいる。

(4)オープンモールのスペシャリティセンター

 カルフォルニアの気候はオープンモールのSCは最高の環境である。基本的にはライフスタイルセンターはオープンモールである。ライフスタイルセンターがオープンモールを志向する理由は、次の3つである。

 @ライフスタイルセンターは自然環境と一体化した体験型SCであること

 Aライフスタイルセンターは外向き店舗により地域に溶け込んだSCであること

 Bライフスタイルセンターは、RSCのテナントを導入するためRSCの経済条件(賃料+共益費)がRSCより3〜4割安いSCであること

 カラバサスパークはオープンモールとして最高の条件を整えている。そして、店揃えはゼネラリティ業態のないライフスタイルセンターの提案性の高い専門店で構成され、地域密着スペシャリティセンターを形成している。これは正に淘汰された商店街を勝ちパターンとして再現した業態ということができる。

(5)スーパーセンターとの異質化業態

 ウォルマートを中心としたスーパーセンターは最寄ニーズのワンストップショッピング及びワンレジ化し、かつディスカウント志向の地域密着の単独業態としては最強である。そのため、多くのビレッジ型NSCが苦況にたたされている。その中にあって、従来のNSCが単なる安さと利便性を提供しているに対し、同じ地域密着型SCでありながら、日常生活の中に美的感覚と生活の提案性を持ち込み、スーパーセンターとは異なったニーズに対応している。客はウォルマートばかりではイヤだ!ウォルマートとは異なる何かが欲しい!のニーズに対応したのがカラバサスパークである。

2.カラバサスパークのエンターテインメント性の要素

 カラバサスパークは住民が自慢するSCがエンターテインメントであり、次の二つに要約される。

 @小商圏の地域密着型SCであるのにライフスタイルの提案性の高いテナントが導入されている。

 ライフスタイルセンターであるカラバサスパークは、小商圏の地域密着型SCであるのに、本来ならばRSCのテナントであるウイリアムソノマ(高級キッチン用品)ジンボリー(高品質の子供服・玩具専門店)バーンズ&ノーブル(図書館型ブックストア)やカジュアルファッションの店が7店、宝石・アクセサリーの店が4店、生活雑貨の店が3店、テーブルサービスのあるレストラン、シネマコンプレックス(6スクリーン)を導入している。身近でRSC並のテナント構成のあるSCがエンターテインメントである。

 A住めば都を感じるSCづくり

 アメリカ社会にとってコミュニティの形成は大切な生活要素である。コミュニティ社会にとって商業施設の導入は必ずしも歓迎されない。カラバサスパークはデザイン性の高さによる美的感覚の高いSCであり住民歓迎され住民にとって近くに来て欲しいSCbPのSCでもある。住宅地に溶け込み地域のシンボルとしてのカラバサスパークは住民にとって住めば都の感覚を与えるSCである。

 カラバサスパークはカルーソ社のSC開発スタンスの住民の理解と賛同を得ることによって開発されるSCである。単に生活をする人を対象としたSCではなく住民としても住んでいる人を意識したSCである。わが国でも環境に配慮したSCづくりが望まれており、その意味においてカラバサスパークの開発概念は参考になる
 
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