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ダウンタウン復活がエンターテインメントの


「シティ・プレイス」



 

1.シティ・プレイスの概要と特徴

 フロリダ州のウエストパームビーチ市の中心市街地のSC化が民間デベロッパーと行政が一体となって開発され、2000年10月に「シティ・プレイス」としてオープンした。アメリカではニューヨーク・シカゴ・サンフランシスコぐらいにしか中心市街地(ダウンタウン)が繁華街として成り立っていない。多くの都市のダウンタウンは荒廃し死に絶えている。ウエストパームビーチ市の中心市街地も1980年代初頭には荒廃し、全米の中都市で最も犯罪が多い町と烙印を押されていた。このダウンタウンが見事復活し、生活者及び住民の評価が高いことが今回事例として取り上げた理由である。また、わが国においても中心市街地の活性化事業がTMO事業として行われているが、ほとんど失敗しており、その意味において参考となる事例でもある。

 シティ・プレイスの施設概要と特徴は次の通りである。
(1)中心市街地の復活を目指した開発

 ウエストパームビーチ市のダウンタウンは郊外のSC開発により切り崩され1980年代初期には荒廃し地価も著しく低下していた。そこでデベロッパーが26ブロック・29万uを240の所有者から5,000万ドルで買収し再開発に乗り出そうとした。市はデベロッパーのマスタープランを承認し、再開発プロジェクトはスタートし、歴史的建築物である教会を除いて建物は全て撤去され更地になった。しかし1990年代初頭の不動産バブル崩壊によって苦境に陥ったデベロッパーは所有地を手放さざるを得なくなり、市が2,000万ドルで買い取った。市は市の中心市街地活性化プランである「シティ・プレイス」を再度強力に推し進めた。市は商業的に死に絶えたも同然の市の発祥の地であるクレマティス通りをコアに据えながら、すでに手当した広大な29万uの空き地と連動させた開発を計画した。この計画をリレイテッド・アーバン・グループがコンペで勝ち取り、土地を75年間、市からリースすることとなった。市は5,500万ドルを税金その他から拠出し、立体駐車場・造園・公共部分の改善を行い、さらに再開発を阻害する規制に対して、スムーズに許可が取れるように最大の協力を行っている。アメリカのほとんどの中心市街地やわが国の多くの中心市街地は、過去の延長線上の考え方では再生不可能な段階まで来ており、わが国の中心市街地の活性化がうまく行かないのも、従来の商店街の延長線上の再開発であるからである。シティ・プレイスはダウンタウンが完全に崩壊した段階で、一度、更地にした上での全く新しい考え方での中心市街地の再生計画である。シティ・プレイスは行政と民間デベロッパーが一体として中心市街地をSCという商業業態を基軸に再生している。

(2)街づくり型のライフスタイルセンター

 シティ・プレイスは2つのSCの特色を持っている。

 @街づくり型のSC

 29万uの敷地に1〜2層の建物をオープンエアの路面型街区として形成されている。既存の商店街のクレオマティス通りとシティ・プレイスのローズマリー通りに沿って数々の広場が取り込まれている。特に、歴史的建築物の教会(現在は劇場)前の広場は、シティ・プレイスの中心となり文化的かつ社交の場となっている。このように、中心市街地は郊外のSCとの異質性が成立の基軸であり、シティ・プレイスは見事、面的広がりを持った散策型の商業街区を形成している。

 Aライフスタイルセンター

 ライフスタイルセンターとは、第一に自然環境・建築デザイン環境・体験環境と融合したSC、第二に人的ふれあいのある地域密着性と融合したSC、第三に生活提案性と融合したSC、第四に街づくりと融合したSCである。シティ・プレイスはオープン型で地中海様式の建築デザインを取り入れ自然環境とデザイン性による演出効果は高い。また、シティ・プレイスは観光客を対象とするのではなく地域の生活者を主力ターゲットとし、地域住民にとっての第三の空間や井戸端会議の場となっている。さらに、小型のメーシーズ百貨店を核に、生活提案性の高い有名ブランド・ショップが導入されており、地元の専門店との相乗効果を発揮している。当然ながら前述のようにシティ・プレイスは真正なる街づくり型SCであり、ライフスタイル志向のSCということができる。

(3)複合型・相乗効果型SC

 中心市街地には次の5つの機能が複合し互いに相乗効果を発揮し、街をつくることが必要である。

 @商業街区

 中心市街地が機能を果たすためには商業街区が必要である。ただ商業施設と言っても郊外のSCとは違いを持った商業機能でないと成立困難である(都心商業に対する郊外商業基軸の原則・都心商業は郊外商業が真似のできないレベルでないと郊外のSCに切り崩される)。シティ・プレイスは、小型百貨店のメーシーズやメガストア、さらには有名ナショナルチェーン、また、地元の商店街をも巻き込んだテナントミックスを街並み型・路面型のオープンエア散策型の店舗配置で形成されている。それゆえに、郊外のSCとは一味異なり、生活者から見て「郊外のSC以外にもう一つ欲しいSC」の位置づけを確立している

 Aオフィス街区 中心市街地が機能を発揮するためにはオフィス街区が必要である。私が日本の中心街のニーズ構造を分析した際、中心街のニーズの50%は郊外からのわざわざ来街するニーズ(アーバンリゾートニーズ)であったが、残り50%はオフィスやサービスのワーカーが事業者さらには事業所への業務来訪のビジター関連ニーズ(アーバンコンビニエンスニーズ)であった。その意味においても、中心市街地にはオフィス街区は必須である。シティ・プレイスには6万uのオフィス床面積があり、かつホテル(375室)、コンベンションセンター(3万2,500u)が存在し、オフィス及び業務施設を充実させ、中心市街地の成立性を高めている。

 B歓楽街区

 わが国の多くの地方都市も商業街区は崩壊しても歓楽街区は残っている場合が多い。郊外SCとの異質化戦略の視点から見ても、なくてはならない機能である。シティ・プレイスは、飲食街として本格的レストランやカジュアルレストラン、さらにオープン型のカフェが建ち並び広場と一体化し、街に溶け込んだ状態で形成されている。また、劇場・美術館・オペラハウス・シネマコンプレックス(20スクリーン)や居酒屋型レストランも導入され、文字通りアメリカ型歓楽街が形成されている。
 C居住街区

 アメリカの中心市街地が崩壊した要因の一つに中心市街地及び周辺市街地(中心市街地を取り巻く下町的居住エリア)に人が住まなくなって空洞化したことがある。ニューヨークなどは中心市街地に人が住んでいるために都心は活気を示している。すなわち、足元人口は中心市街地を生活の必然性のある場として利用し、常に中心市街地が賑わい性をもたらしている。この賑わい性が広域の生活者を呼び込む要因となっている。人も動物も賑わいのある場に集まる習性を持っており、賑わいのない場は物理的施設を活用させない(よくある広場のみをつくって賑わい施設をつくらないケース)。シティ・プレイスは現在582戸、近未来には935戸の住宅を開発している。1,000戸程度の住宅から発生する商業ニーズは量的には少ないが、賑わい演出の波及効果は大きい。わが国でも周辺市街地(都心から10q圏)に人口が増加しているエリアは都心の商業に活力が戻ってきている。

 Dパーク街区

 中心市街地に採算的には課題があるが、どうしても欠くことのできない機能がパーク(公園)機能である。日本のみならず世界の主要都市には必ず公園や広場や河・湖・池が存在し、市民の憩いと癒しの場となっている。また、これらのパーク機能と商業施設の融合による賑わい空間が中心市街地には必要である。 シティ・プレイスは、広場・ストリート・パティオ・アーチ・造園・格子・文化かつ社交コアが設けられ、歴史的建築物の教会前の広場にはレストランの野外席が設けられ、コンピューター制御でダンスをする噴水も設けられ、広場と店舗が融合し、単にさみしい広場づくりが多い中で、賑わい性を醸し出していることは見事である。店舗ファサードのデザインは、個々の店舗の独自性が出せるようなデザインであると同時に、シティ・プレイス全体と調和するものとしている。全体的な環境演出は、南地中海様式が取り込まれているが、地域固有の特性をも考慮して独自性を発揮している。このように、シティ・プレイスは静かな自然を満喫する場ではなく、人間本来の持つ集団性を活用した必然性のある人工性と自然環境を融合した中心市街地にふさわしいパーク機能を持っている。パーク機能は賑わいと一体化しないと意味がいないことを認識しないと多くのハード優先のパーク施設づくりのように失敗することになる。

(4)異色の2核体制

 シティ・プレイスは郊外のSCとは異なる独自性の都市機能を発揮して成り立っている。その一つに核店機能がある。シティ・プレイスの集客の核はエンターテインメント性にあるが、商業核として百貨店のメーシー百貨店と食品スーパーのパブリックスが導入されている。最近の傾向としてライフスタイルセンターに小型百貨店が進出している。ライフスタイルセンターの成立要因と地域密着志向の小型百貨店はメカニズム的に整合性が合うのだろう。シティ・プレイスも物販は周辺のRSCとの競争により例にもれず影響を受け始めている。そこで新たな戦略として旧来の高級商品志向からライフスタイル志向の物販へとテナントミックスを変化させ、さらには飲食テナントの比率を増大させている。その一環として、核店としてメーシー百貨店と地域密着性を高めるために食品スーパーのパブリックス(フロリダ州で最大のチェーン店・庶民的な商店街風なスーパーマーケット)を導入し、さらに、シティ・プレイスの入口には2層建てのバーンズ&ノーブル書店(図書館型書店)を配置している。このように、都心志向業態の百貨店と地域密着志向の食品スーパーとライフスタイルセンター必須の図書館型(すわり読み自由の書店)の異色の核店構成となっている。

2.シティ・プレイスのエンターテインメント性の要素

 シティ・プレイスはダウンタウンの復活がエンターテインメントである。

(1)新風商店街のSCへのノスタルジアがエンターテインメント

 アメリカではダウンタウンが住民の郊外移動による都心部の空洞化や郊外にSCの大量出店により、いわゆる商店が崩壊してしまった。都心の商業や商店街にも長所はあったが、勝ちパターン化(異質性と競争優位性のある商法)していなかったから、アメリカでは崩壊し、わが国では長期低落下の道を歩み、三大都市圏以外の車社会のエリアではわが国でも商店街は崩壊している。アメリカでは消滅してしまったダウンタウンや商店街に対するノスタルジア(郷愁)が高まっているが、しかし商店街は負けパターンの業態である。シティ・プレイスは、とことんダメになったダウンタウンを、ほんのわずか残っていた商店街を起爆剤に行政と民間デベロッパーが街づくりとして再生した。いわば、商店街の良さを持ったSCである。間違ってはいけないのはSCの良さを持った商店街ではないことである。シティ・プレイスは、住民が持つ商店街へのノスタルジアを見事、SCとして再生させている。

(2)もう一つのSCがエンターテインメント

 生活者は特定の分野単位で二つの強力な業態を選択肢として持ちたいと考えている。郊外型SCは強力であり魅力あるSCであるが、郊外型SCばかりではイヤだ!と考えて、特定の分野で二つの選択肢のSCを望んでおり、この考え方を「SCの2.5成立理論」あるいは「もう一つのSC理論」と呼ばれている。シティ・プレイスは正に郊外SCとは異質性を持ち、かつ、郊外SCには負けない競争優位性を備えたSCである。生活者は、郊外型SCとシティ・プレイスの二つの選択肢を持つことにより高満足な買い物ができることになる。

(3)都市の顔づくりがエンターテインメント

 都市には都市の中心であると、だれしも思える場が必要である。色々なイベントを通じて地域の絆・家族の絆・仲間との絆の場、さらには故郷愛が芽生える場として都市の顔は必要である。また、その都市の顔は住民が自慢し・誇りに想える場であることが望ましい。シティ・プレイスは正に都市の顔の役割を果たすことができ、住民が誇りに想う場である。

 シティ・プレイスはとことんダメになったダウンタウンを、崩壊寸前の商店街を起爆剤にして行政と民間デベロッパーが一体となって開発したライフスタイルセンター志向のSCである。このシティ・プレイスの成功により、ウエスト・パームビーチのダウンタウン全体の不動産価値は3倍に跳ね上がった。正に、シティ・プレイスは中心市街地再生のモデルケースである。わが国でも、市街地活性化事業が進められているが、過去の延長線上の考え方ではなく、未来の発想(新の発想)からの勝ちパターンづくりの街づくりでないと成功しないことを断言する。
 
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