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「アバクロンビ&フィッチの特性


 

 カレッジ・ファッションのアバクロンビ&フィッチがアメリカの専門店業界の中で注目を集めています。アバクロンビ&フィッチ社は、1892年にアウトドアスポーツ用品の店として創業され、1988年にリミテッド社に買収されてからアパレルストアへと業態展開しました。1998年にリミテッド社はアバクロンビ&フィッチ社を上場してスピンオフさせました。現在のアバクロンビ&フィッチ社の概要は次の通りです。

(2005年度)


 アバクロンビ&フィッチ社の店舗パターンは、ターゲット別に次の通りです。

(2005年度)


 アバクログループ(アバクロンビ&フィッチ社のカレッジ・ファッションの3業態を総称した名称)の人気と強さのポイントは、技術的な面では色々あると思いますが、ここでは次の4つのポイントに絞って説明します(六車流:流通理論)。

@アンチテーゼ化したカレッジ・ファッションの専門店

 アバクログループは大学生、高校生、中学生をそれぞれターゲットとするカレッジ・ファッション業態です。

 一般的に、ファッションレベルを「利用シーン」の観点から分類すると、次のようになります。



 アバクログループの特性を語るにおいて重要なポイントは、「アンチテーゼ」(反発)です。閉鎖的な店舗入り口、暗い店舗内照明、カレッジ・ファッションとしては過激なポスター、トレンド性のある商品…等は、今までのSC内専門店としての常識を超えた斬新(?)な店づくりです。客のファッションの表現シーンの中に、オン・オン→オン→オン・オフ→オフ・オン→オフ→オフ・オフの6段階あり、仕事用・学校用、遊び用、日常用(カジュアル)を使い分けたシーン展開をします。いわゆる、T・P・Oによるファッションの使い分けです。

 本来、カレッジ・ファッションは、「オン・オン」(制服)及び「オン」(学生らしい清楚な服装)が基本ですが、今は「オン・オフ」から「オフ・オン」まで学生としての制約の範囲内でのカジュアル・ファッションやおしゃれファッション化しています。これを体制内ファッション(ビジネスマンやキャリアウーマンも会社やビジネスという枠にはまった服装であり、体制内ファッションの位置づけ)と言います。

 ところが中学生、高校生、大学生は人生における親に対しては反抗期であり、社会に対しては反体制的です。

 それゆえに、学生は社会や家庭に対する潜在的アンチテーゼを持つターゲットであり、また、学生は思春期かつ性に対する関心の高い年齢です。それが「ワイルド&セクシー的なファッション」の一環として、カレッジ・ファッションとしてギリギリの限界ラインのファッションレベルまで達したのが、アバクログループの「やや崩れた粗野なカジュアル・ファッション」と言うことができます。ファッションの利用シーンで言えば、「オフ・オフ」のカレッジ・ファッションの位置づけにあります。キーワードは、ワイルド&セクシー、かっこよさ、アンチテーゼ、前衛的・脱カレッジ、チョイ悪学生、不良っぽさ…等で、それゆえに、アバクログループは学校ファッションではなく、学生をターゲットとするカレッジ・ファッションです。正に、太陽の季節(小説・映画)に出る「太陽族」のアメリカ版ファッションの店です。

 ちなみに、ノードストロム・スタイルは「オン・オフ」あるいは「オフ・オン」のファッション・シーンレベルです(参考までに)。

Aカレッジに特化し、カスタマイズ化した専門店

 アバクログループは、従来の規制化されたカレッジ・ファッションから脱皮したアンチテーゼ(反発)型のファッションであり、学生にとって斬新なライフスタイルを提案(こんなファッションがあったのか!!)した専門店です。しかし、ターゲットはアバクロンビ&フィッチが大学生、ホリスター・カンパニーが高校生、アバクロンビが中学生であり、著しく狭い客層を対象としています(ノードストロムの客層の幅の広さと比較して、著しく狭いエイジ戦略です)。ある意味ではフォーエバー21(永遠に21歳でいたいという、21歳を基軸とした女性専門店)に似ていますが、フォーエバー21は21歳を基軸とした幅広いヤング及びヤングマインドを対象とした専門店であり、アバクログループより幅広い客層を対象としています。もちろん、アバクロンビ&フィッチも、大学生のみならずヤング層まで幅広く対応していますが、コンセプトが明確なため客層の幅は限られています。

 このように、アバクログループは客層が狭いため、カスタマイズ化(学生の趣好に特化した、あなた好みの店づくり)された専門店業態でもあります。このライフスタイル・コンセプトの明確さによるニッチマーケット化を、カスタマイズ化の深化(マーケットの掘り起こし)によって補っており、圧倒的に学生に人気のある専門店業態には間違いありません。それゆえに、エイジ的には20代前半までで、20代後半の人が着ると変に思われるような学生に特化した業態です。その意味において、フォーエバー21の幅広いエイジ戦略とは異なります。

 蛇足ながら、大人のファッション業態であるルールの業績が良くないのは、アバクロンビ&フィッチの感性は必ずしも、一般ヤング及びキャリアのヤングマインドターゲットには適合しないと同時に、競争相手が多く感性的な独占マーケットが形成されないためと思われます。

Bプライス的にはワンランク上の専門店

 今、多くの中間プライスゾーンの商品ニーズが減少し、上へ「1」、下へ「2」の割合で移行しています。アバクロンビ(中学生対象)とホリスター(高校生対象)は、プライスゾーンは15$から30$ですが、アバクロンビ&フィッチ(大学生対象)は20〜30$から50〜60$まであり、やや高めのプライス設定をしています。学生達にとって、斬新な雰囲気の場づくり(空間づくり)とトレンド性の高い商品の中で、学生版のアフォーダブル・ラグジュアリー(ちょっと贅沢したい商品)としての位置づけにあり、その結果、売場効率と収益性の高い専門店業態が確立しています。

C流通のエアポケットのビジネス化と棲み分け分野の新一番店商法を導入した専門店

 アバクログループは、従来のカレッジ・ファッションから脱皮した新しい分野を開拓した専門店です。正に、学生としてのアンチテーゼの分野のエアポケット(空白エリア)をファッションビジネスとして確立しました。ちょうど、ビクトリア・シークレットがアメリカ女性の寝間着や下着感覚のランジェリー・ファンデーション業界の中で、ヨーロッパ女性のようなセクシー&エレガント感覚のランジェリー・ファンデーション分野をエアポケット理論に基づいて開発したのと同じ概念です。

 エアポケット理論で新しい分野を開発しても、敵の参入を許したのでは独占マーケットが形成できません。アバクロンビ&フィッチ社は、同じ分野に参入した追随・ライバル会社であるアメリカン・イーグル社を、商品と販売方法を模倣していると訴えています。1つの企業が大成長するためには、マーケットの中でエアポケットを見抜きビジネス化すると同時に、敵の参入障壁を高くしなければなりません。

 1つの分野のライフスタイルを確立し、独占マーケットを維持するためには、「自らが常に進化・深化するか!!」「敵の参入障壁を高くするか!!」の2つの手法を取らなければなりません。

 蛇足ながら、オールドネイビーはリーズナブル・カジュアル・ファッション分野を確立し大発展しましたが、現在はオールドネイビーよりビジネスモデルの精度が高い敵の参入を許し、ユニクロやH&M、さらには、よりロープライスの業態であるターゲットやウォルマートに押され苦戦しています。


 
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